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Monday, March 1, 2021

土木とITをつないだプログラミングコンテストという選択肢--鹿島建設とAtCoderの新たな挑戦 - CNET Japan

 鹿島建設と競技プログラミングコンテストサイトを運営するAtCoderが、土木業界におけるエンジニアの育成、就業に乗り出している。ダムやトンネルなどを造る土木事業とエンジニア。一見すると相反する世界のように感じるかもしれないが、深刻な人手不足が続く今、エンジニアは土木業界における必須人材となっているという。

 土木業界の人手不足にエンジニアがどう寄与しているのか。また、土木とエンジニアを結びつけることで、何が変わっていくのか。鹿島建設 技術研究所プリンシパル・リサーチャー兼機械部自動化施工推進室長博士(工学)の三浦悟氏とAtCoder 代表取締役社長の高(漢字ははしごだかの高)橋直大氏に聞いた。

右から、鹿島建設 機械部自動化施工推進室長 技術研究所プリンシパル・リサーチャー博士(工学)の三浦悟氏とAtCoder 代表取締役社長の高橋直大氏
右から、鹿島建設 機械部自動化施工推進室長 技術研究所プリンシパル・リサーチャー博士(工学)の三浦悟氏とAtCoder 代表取締役社長の高橋直大氏

土木事業に携わる人口が急激に減りつつあるという現状

――エンジニア不足がどの業界でも叫ばれていますが、土木業界における現状を教えて下さい。

三浦氏 建設現場の仕事はどうしてもアナログ的なんですね。これをデジタル的な仕事に変え、建設現場の工場化を目指しています。

 ご存知のように、建設工事のほとんどは、長い時間と多くの人手をかけて行われます。典型的な労働集約型の産業と言えるでしょう。ところが今、土木事業に携わる人が急激に減りつつある。この人手不足を解消するには1人あたりの生産性を上げなければいけません。今までは、手仕事だったものをシャベルに持ち替え、シャベルを建設機械に変えて対応してきましたが、この機械を自動で動かすような大きな変化が必要です。

 ただ、現場の仕事は職人のプロの手によるものですから、誰でも彼でもできるようなものではない。ベテランの職人の仕事をデジタルに置きかえるのは、私たちはソフトウェアしかないと思っています。定性的な仕事を定型的な仕事にデジタルトランスフォーメーション(DX)する。そのために必要なのがITエンジニアなんです。

高橋氏 ITエンジニアの数は土木業界に限らず不足していて、さらに不足傾向は強まっています。それはなぜかというと、あらゆることがコンピューターで置き換えられるようになっているから。そのため、コンピューターを自由に扱えるのは必須スキルになり、どの業界でも求められています。

 ITエンジニアになるのは、学校の情報学部を卒業し、関連企業に就職してというのが一般的なルートですが、これでは全然数が足りない。その結果、少ない人に仕事が集中し、ブラックな仕事環境が生まれてしまう。これではよくないなと。情報学部に限らず、そのほかの学部を卒業した人でもプログラミングができる、そうした環境を作ることが必要だと考えています。

 これが実現できれば、ITエンジニアの数は増やしていけると思っています。ただ、大学だけでは追いつかないので、学校以外の部分で学べる環境を整えることが必要です。この流れが進めば、情報系の人材が足りないという困りごとから脱出できると考えています。

――ITエンジニア不足の解消という両社の思いが一致しているのですね。

三浦氏 鹿島建設では、2年ほど前から積極的にITエンジニアの獲得を進めてきました。「土木をコードで書きかえろ。」というウェブサイトに代表されるように、PR戦略を進めてきました。その中で1つの手法として外部の方にすすめていただいたのが、AtCoderの取り組みでした。

 PR戦略はかなり積極的にやっていたのですが、情報学部の学生の方はもちろん、転職を考えているITエンジニアの方など、届けたい人にうまく届いていないのでないか、という懸念がずっとあったんですね。就職や転職を考えているのであれば、まずIT系の企業を探す。建設会社の土木事業がITエンジニアを求めているとは思いつかないと思います。

 それでは確率が低い。ただウェブサイトもプロモーションムービーも、私自身も見るたびに「かっこいい」と感じていまして、これをITエンジニアの方たちにみてほしいと思っていました。で、どうすれば知ってもらえるだろうと。その時にAtCoderが主催するプログラミングコンテストに挑戦してみようと思ったんです。

高橋氏 最初にお話しをいただいたときは「なぜ鹿島建設?」と思いました。もちろん名前は知っていましたが、私自身は建設業界に疎く、どうしてITエンジニアが必要なのかと。しかし調べてみると、建設機械の自動運転を核とした自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」など、非常に面白い取り組みをしているんですね。ほかの建設会社がどうなのかはわかりませんが、A4CSELのような取り組みをしている自体が魅力的ですし、かなり進んでいるなと。こうした会社であれば、ITエンジニアの人たちも楽しく仕事をしていただけると思いました。

三浦氏 A4CSEL は、2009年から開発している、これまでにない発想から生まれた建設生産システムです。振動ローラとブルドーザとダンプカーを自動運転させることで、建設現場の自動化を進めています。開発のベースには、これまで職人の方たちの技能に委ねられてきた作業を数値化して、情報化することが将来の建設生産の鍵になるという思いがありました。

建設機械の自動化システム「A<sup>4</sup>CSEL」を使った現場のイメージ。自動振動ローラによるコア材の転圧作業
建設機械の自動化システム「A4CSEL」を使った現場のイメージ。ダム本体工事で自動ダンプトラックとブルドーザの稼働状況

 例えば、家の増改築をお願いして、施工期間はどのくらいかと尋ねると「大体2カ月くらい」といった返答がされると思いますが、今後は「2カ月と10日」など、正確にわからなければだめだろうと。そうした現場を変えていく取り組みは、業界内でも先頭を切っているという自負があります。

高橋氏 仕事の内容自体が新しく、できたときの達成感も得られる。ITエンジニアとしてやりがいが得られる職場だと感じています。とてもいいのは、1つのものを作っただけで終わらないこと。1つなにかを作った後も次々と作るものが存在し、将来的に業界全体を変えていけるような仕事ができることです。DXをする余地が残っていて、自らを開拓できるのはエンジニアにとってとても楽しい仕事。こうした環境が鹿島建設には整っていると感じました。

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