岸田文雄首相とバイデン米大統領が5月23日、東京で首脳会談に臨んだ。日米関係に詳しい前嶋和弘・上智大学教授は「安全保障をこれだけ強く前面に出した日米首脳会談はかつてなかった」と評する。その背景には、防衛力の抜本的強化を目指す日本政府の方針と、ウクライナ危機で欧州が混乱を極める中でも「中国は唯一の競争相手」と捉え、その中国から日本を守ることにコミットした米政府の決意がある。
(聞き手:森 永輔)
今回の日米首脳会談で、前嶋さんが最も注目したポイントを3つ教えてください。
前嶋和弘・上智大学教授(以下、前嶋):第1は、日本の防衛力を強化する意向を日本政府が明確に示したことです。
前嶋和弘(まえしま・かずひろ)
上智大学総合グローバル学部教授。専門は米国の現代政治。中でも選挙、議会、メディアを主な研究対象にし、国内政治と外交の政策形成上の影響を検証している(写真:加藤 康)
防衛費を「相当」増額し「あらゆる選択肢」を検討する
日米首脳共同声明は次のように表現しています。
両首脳は、同盟の抑止力及び対処力を強化することへのコミットメントを新たにした。岸田総理は、ミサイルの脅威に対抗する能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明した。岸田総理は、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領は、これを強く支持した。
「相当な増額」を、米国から要求されて応じるのではなく、日本側から表明したことに驚きました。「かなり踏み込んだ」と評価します。
「あらゆる選択肢」との表現にも注目しました。この表現はさまざまに解釈することができるからです。一般には、政府は「ミサイル攻撃に対する反撃能力」*を意図しているといわれています。自民党の一部には核シェアリングと解する人もいるでしょう。さらに、「台湾有事の際に(あらゆる選択肢を検討する)」と読む人もいるかもしれません。
*=従来は「敵基地攻撃能力」と呼ばれていた。相手のミサイル発射拠点をたたくこと
それに関連して、私は「同盟を絶えず現代化させ、二国間の役割及び任務を進化させ、共同の能力を強化させていく決意を表明した」という表現が気になりました。
「役割」の「進化」は、日本がこれまで果たしてきた「盾」の役割を超えて、「矛」の役割も果たすようになると読むことができます。それを前提とすると、その先にある敵基地攻撃能力の実現にコミットした、と解釈できます。
からの記事と詳細 ( 日米首脳会談、「あらゆる選択肢」と「拡大抑止」が示す本気の同盟 - 日経ビジネスオンライン )
https://ift.tt/1W3PGXB
No comments:
Post a Comment