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Thursday, February 3, 2022

全身型重症筋無力症に対する新たな治療選択肢 - 日経メディカル

 2022年1月20日、抗胎児性Fc受容体(FcRn)フラグメント製剤のエフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)(商品名ウィフガート点滴静注400mg)の製造販売が承認された。適応は「全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏功しない場合に限る)」、用法用量は「成人に1回10mg/㎏を1週間間隔で4回1時間かけて点滴静注。これを1サイクルとして、投与を繰り返す」となっている。

 重症筋無力症(MG)は極めてまれな自己免疫性疾患であり、神経筋接合部の構成要素を標的とする病原性のIgGが介在することが知られている。このIgG自己抗体の標的となる神経筋接合部の構成要素には、主にアセチルコリン受容体(AChR)、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)、LDL受容体関連蛋白4(LRP4)などが知られており、日本のMG患者の80~85%が抗AChR抗体陽性とされている。MGは障害が出ている筋群により眼筋型および全身型に大別されるが、全体の80%(1万8000~2万4000人)程度が全身型MG(gMG)と推定されている。

 現在、gMGの薬物治療としてはプレドニゾロン(プレドニン他)などの経口ステロイドを中心に、タクロリムス水和物(プログラフ他)、シクロスポリン(サンディミュンネオーラル他)の経口免疫抑制薬、アンベノニウム塩化物(マイテラーゼ)などのコリンエステラーゼ阻害薬、血漿交換、ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン(献血ヴェノグロブリンIH)、エクリズマブ(遺伝子組換え)(ソリリス)の抗補体(C5)モノクローナル抗体が臨床使用されている。

 エフガルチギモド アルファは、FcRnを標的とするアミノ酸残基を改変したIgG1のFcフラグメントであり、内因性IgGのFcRnへの結合を競合阻害することによって、内因性IgGのリサイクルを阻害して、IgG分解を促進し、IgG自己抗体を含む血中IgG濃度を減少させる作用を有している。日本人を含めたgMG患者を対象とした国際共同第III相試験(ARGX-113-1704)およびその継続投与試験(ARGX-113-1705)から、本薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2022年1月現在、米国で承認されている。日本では、20年6月に希少疾病用医薬品に指定されていた。

 副作用として、主なものは頭痛(5~15%未満)、浮動性めまい、悪心、嘔吐、処置による頭痛、リンパ球数減少、好中球数増加、疲労、帯状疱疹、発疹(各5%未満)などであり、重大なものは感染症(6.8%)が報告されているので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に関しては、下記の事項について十分留意しておく必要がある。

●何らかの理由により投与が遅れた場合は、あらかじめ定められた投与日から3日以内であればその時点で投与し、その後はあらかじめ定めた日に投与すること。また、投与日から3日を超えた場合は投与せず、次の定めた投与日に投与すること

●薬剤投与により、血中IgG濃度が低下し、感染症が発現または悪化する可能性があるので、治療期間中および治療終了後は定期的に血液検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること

●薬剤投与により、infusion reactionが発現する可能性があるので、患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には本薬の投与速度を下げる、または投与を中止し、適切な処置を行うこと

●国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施すること

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