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Wednesday, February 19, 2020

山本恵理 障がいとは“選択肢のなさ”「あなたが誰かの選択肢に」 - スポニチアネックス Sponichi Annex

「あすチャレ!アカデミー」で講師を務める山本
Photo By スポニチ

 「なるほど」と思った。障がいを持つ講師と共生社会や多様性などを考える日本財団パラリンピックサポートセンターのセミナー「あすチャレ!アカデミー」。下肢に障がいがある選手がベンチプレスで競うパラ・パワーリフティングで東京パラリンピック出場を狙う山本恵理が言った。

 「“何かお手伝いすることありますか?”このひと言で障がいがなくなるんです」―。

 セミナーの中で参加者に対し「障がいとは?」と問い掛けた講師役の山本は「身体的な要素でできないことがある状況」「乗り越えなければいけないもの」と回答を受けると、自身の考えを披露。「大半の方が持つ選択肢がないと感じた時。選択肢のなさを障がいと感じる」と口にした。

 レストランやカフェに行きたいと思った時にエレベーターがないなどハード面で制約を課されることもあれば「車いすお断り」という店舗の方針などソフト面で行き先が限定されることもある。いずれの場合も健常者と比べると選択肢が失われる。そんな時に障がいを実感するのだという。下肢が不自由な山本だが「足の身体的な障がいは車いすで解消されている」と話す。前向きなアスリートならではの受け止め方かもしれないが、それでもなお壁を感じるのが選択肢の問題。だから障がいをなくすための手段として「あなたが誰かの選択肢になる」ことの重要性を説いた。

 「誰かに声をかけてもらうだけで私が今まで持っていなかった選択肢が増えるんです」

 補助があればエレベーターがない店に行けるかもしれない。テイクアウトで購入可能なものがあるかもしれない。そして女子55キロ級で63キロの日本記録を持つパワーリフターは「私たちも選択肢になります。何か重いものを運ぶ時は頼ってください」と付け加えた。健常者と障がい者の共生社会を成熟させていくためには「お互いの長所を生かして選択肢になり合える」関係が必要という。セミナーでは視覚障がい者をガイドする際のポイントや車いすを使用する障がい者との対話には目線の高さを合わせるなど実践的な指導も行った。

 日本財団パラサポ職員の山本は「あすチャレ!アカデミー」を企画、運営するプロジェクトリーダーでもある。ジュニア版も含め、自ら講師として年300回程度のセミナーをこなすなど主導的な役割を果たしてきた。

 「パラリンピックを見るだけでなく、自分が何をできるのか考えてほしい。“共生社会って何なんだろう”とみんなが考えないと社会は変わっていかない。問題意識をそれぞれ持ちながら社会を変えていくきっかけにパラリンピックがなれば」

 仕事で共生社会への理解を深める環境を整え、アスリートとしても自らその推進力となるべく東京パラ出場に照準を定める山本。競技場内外で注目を集める存在となりそうだ。(東 信人)

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