【カイロ=佐藤貴生、ワシントン=大内清】イラン核合意の修復をめぐる同国と米国の間接協議を含む合意当事国の協議が29日、ウィーンで再開した。イランは核爆弾に必要な核物質を1カ月前後で製造できるともされ、当事国は危機感を強めている。バイデン米政権は対話による解決が不調に終われば「別の選択肢」を検討するとしており、行方は予断を許さない。 イラン外務省報道官は29日、同国の首都テヘランで記者会見し、交渉団は「真剣な決意と意思」を持ってウィーン入りしたとし、米国がイランに科した制裁の解除を改めて要求した。 核協議の開催は約5カ月ぶりで、イランで反米保守強硬派のライシ政権が発足してから初めて。2018年に核合意を離脱してイランへの制裁を再開した米国は、英仏独中露とイランの当事国協議に同席せず、欧州連合(EU)の仲介でイランと間接的に協議する。 イラン側は米国の全制裁の一斉解除が協議再開の目的と強調し、米国に「二度と核合意から離脱しない」との確約を要求している。合意内容を条約とする方法が考えられるが、米国としては議会で与野党が拮抗(きっこう)し、条約批准に必要な票数を確保する見通しが立たない現状では受け入れがたい。 イラン側の強気の背景には核開発の進展がある。 イランは米国の制裁再開に反発し、合意を逸脱する核関連活動を拡大。今年4月に、核兵器転用可能な濃縮度90%に大きく近づく同60%のウラン製造を始め、加速させている。核爆弾1個分の高濃縮ウラン製造にかかる「ブレークアウト・タイム」は1カ月前後に縮まったとの見方もある。 イランは国際原子力機関(IAEA)に対し、首都テヘラン西方のカラジの施設への監視も拒否。カラジでは高性能遠心分離機の部品を製造しており、IAEAのグロッシ事務局長は24日、継続的な状況把握が「保証できない段階に近づいている」と危機感を示した。 イランの核開発に歯止めが利かなくなる中、米政権はウラン濃縮凍結と引き換えに、制裁を限定的に緩和する暫定措置を検討しているとの報道もある。協議の時間を引き延ばす狙いだ。しかし、イランは中国への原油売却を増やして制裁の無力化を進めており、妥協案に応じる見通しは低い。 このためバイデン政権に対しては、中国など第三国によるイラン産原油の購入阻止のために制裁圧力を強化したり、イランの核保有を警戒するイスラエルによる妨害工作を支援したりするなど、強硬な措置を検討すべきだとの声も強い。 イスラエルのベネット首相は29日、協議開始に先立って声明を出し、「イランには交渉したり、制裁を緩和したりする価値がない」と強い懸念を示した。 イスラエルは近年、イランの核開発妨害のため、同国内の核施設の破壊工作などに関与してきたとされる。イスラエル軍幹部は11月、イランへの軍事作戦を急ピッチで策定していると述べた。イランに融和姿勢をみせないよう米国にクギを刺す狙いもうかがえる。
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