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Wednesday, June 2, 2021

4Kゲーミングにベターな選択肢! 「GeForce RTX 3080 Ti」の実力をチェック(1/4 ページ) - - ITmedia

 6月1日(日本時間)、NVIDIAが最新ハイエンドGPU「GeForce RTX 3080 Ti」と「GeForce RTX 3070 Ti」を発表した。それぞれが“Ti”なしの上位GPUという位置付けとなる。

 スペックを見る限りにおいて、RTX 3080 TiもRTX 3070 Tiも、“Ti”という名に相応しいパフォーマンスアップが図られている。半導体不足とマイニング需要によりGPU全般の入手難が長期化する中ではあるが、今回の発表に注目していたユーザーも少なくないはずだ。

 この記事では、6月3日22時から販売が解禁されるRTX 3080 Tiの実力を、NVIDIAが自ら設計したグラフィックスカード「GeForce RTX 3080 Founders Edition」(日本発売未定)を通してチェックしていく。

カード全景 GeForce RTX 3080 Founders Editionのパッケージとカード。日本では発売を予定していないため、パートナー企業の設計したカードを購入することになる

「GeForce RTX 3090」に近づいたスペック

 RTX 3080 Tiは、他のGeForce RTX 30シリーズと同様に「Ampere(アンペア)」アーキテクチャで設計されたGPUだ。コアは「GA102」と、Tiの付かないベースモデルと同じものを使っている。ただし、内部的にはSM(Streaming Multiprocessor)とGPC(Graphics Processing Claster)の構成が変わっており、利用できる「CUDAコア」の数が増えている。

 深層学習で用いる「Tensorコア」は第3世代、リアルタイムレイトレーシング(RT)処理で用いる「RTコア」は第2世代で、機能的には他のGeForce RTX 30シリーズと違いはない。

スペック比較 GeForce RTX 30シリーズの主なスペック

 RTX 3080 Tiの主なスペックを箇条書きすると、以下のようになる。

  • CUDAコア数:1万240基
  • シェーダー処理能力:34TFLOPS
  • レイトレーシングコア処理能力:67TFLOPS
  • テンサーコア処理能力:273TFLOPS
  • グラフィックスメモリ:12GB GDDR6X
  • 消費電力:350W(Founders Editionの場合)

 まず目を引くのはCUDAコア数の多さだ。RTX 3080 TiのCUDAコアは10240基で、RTX 3080の8704基を大きく上回り、シリーズの最上位である「GeForce RTX 3090」の1万496基に近い。動作クロックこそ少し落とされてはいるものの、数十MHz程度の差であれば、演算ユニットの多さがものをいう。少なくとも、演算性能に関してはRTX 3080を上回ることは確かだ。実際のパフォーマンスについては、後でチェックすることにしよう。

 グラフィックスメモリはRTX 3080から2GB増えて12GBとなった他、メモリバス幅がRTX 3090と同じ384bitに強化された。RTX 3080では「演算性能に対してグラフィックスメモリ容量がやや心もとない」といった声が聞こえてくることもあった。さすがにRTX 3090の24GBには及ばないが、グラフィックスメモリを大量に使いがちなAAA級ゲームタイトルを高解像度かつ余裕を持った設定でプレイできるようになることはうれしい。

 もっとも、グラフィックスメモリが12GBあっても足りないというタイトルもないわけではないが……。

GPU-Z 「GPU-Z」でサンプルの情報を取得。GPUコアが「GA102」である点、メモリがMicron製GDDR6Xメモリである点などが読み取れる

 一方、GeForce RTX 3080 Ti Founders Editionの消費電力は350Wで、「GeForce RTX 3080 Founders Edition」よりも30Wほど高く、GeForce RTX 3090 Founders Editionと同等だ。先述の通り、性能的にはRTX 3090に近いこともあって、消費電力もそれ相応となる。

 当然ながらGPU用補助電源は「8ピン×2」となる。これはパートナー企業が設計したグラフィックスカードも同様だ。

電源ピン回り GeForce RTX 3080 Ti Founders Editionの電源ピンは12ピンで、一般的な8ピン×2に変換するためのアダプターが付属する。カード単体の消費電力は350Wで、数値的にはRTX 3090と同じで“電源食い”である

 RTX 3080 Ti搭載グラフィックスカードの想定販売価格は、日本では17万5800円となっている。RTX 3080は10万9800円、RTX 3090は22万9800円だったことを考えると「まあ、こんなものだろう」だと思える。ただ、現状においてグラフィックスカードの実売価格は軒並み高騰傾向にある。初出価格が想定販売価格を上回る可能性は高い。現時点においてコストパフォーマンスを語るのは難しいだろう。

正面背面 GeForce RTX 3080 Ti Founders Editionの内部基板。GeForce RTX 3080からパワーアップしている割にはサイズの変化はほとんど見受けられない
並べてみよう 実際にRTX 3080 Ti(下)とRTX 3080(上)のFounders Editionを並べてみると、サイズに変わりはない。奥行きが確保されたケースで、2スロットの空きがあればしっかりと装着できる

GeForce RTX 3080の実力をチェック!

 前置きはこれくらいにして、GeForce RTX 3080 Ti Founders Editionの性能をベンチマークテストを通してチェックしていこう。

 第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Rocket Lake-S)がPCI Express 4.0バスを備えたこともあり、今回はCore i9-11900K(3.5GHz〜5.2GHz、8コア16スレッド)を主体とするIntelベースのシステムで検証を実施する。比較対象として、同世代のGeForce RTX 3080 Founders Editionと、前世代のGPU「GeForce RTX 2080 Ti」を搭載するASUS JAPAN製グラフィックスカード(ROG-STRIX-RTX2080TI-O11G-GAMING)も用意した。

 グラフィックスドライバーは、RTX 3080 Tiのみテスト版の「バージョン466.54」を、その他はテスト時において最新の「バージョン466.47」を使用している。今回のシステムではRisizable BAR(※1)も利用できるが、今回は同機能を無効とした状態でテストを実行している。

(※1)PCI Expressバスを介してCPUからグラフィックスメモリに直接アクセスする機能

検証環境 今回の検証環境

3DMark

 まず、DirectX Raytracing(DXR)(リアルタイムレイトレーシング)を利用しないベンチマークテストを進めていく。

 1本目は、3Dグラフィックスの描画性能をチェックする定番のベンチマークソフト「3DMark」だ。今回は、DirectX 12ベースの「Time Spy」シリーズ、DirectX 11ベースの「Fire Strike」シリーズを実行した。

 Time Spy系テストでは、RTX 3080 Tiが最も高いスコアを記録した。次いでRTX 3080、やや引き離されてRTX 2080 Tiという順番で、順当といえば順当である。フルHD(1920×1080ピクセル)で描画する「Time Spy」の総合スコアで比べてみると、RTX 3080 TiはRTX 3080比で5%前後、RTX 2080 Ti比で20%前後高いスコアを記録している。より負荷の高いWQHD(2560×1440ピクセル)で描画する「Time Spy Extreme」では、この差が8%前後、25%前後とさらに広がる。

Time Spy 3DMark(Time Spyシリーズ)のテスト結果

 Fire Strike系テストでも、スコアの並び方は変わらない。テストの解像度(負荷)が高まるほどスコア差が広がる傾向も同様で、4K(3840×2160ピクセル)で描画する「Fire Strike Ultra」では、RTX 3080 TiのスコアはRTX 3080比で10%前後、RTX 2080 Ti比で30%前後ほど高い。

 前世代において「最も強いゲーミングGPU」の名をほしいままにしていたRTX 2080 Tiに対して、これだけのパフォーマンス差を見せつけているのは、素直に驚きだ。

Fire Strike 3DMark(Fire Strikeシリーズ)のテスト結果

FF14ベンチマーク/FF15ベンチマーク

 続いて、実際のPCゲームをベースとするベンチマークソフトとして「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」を実行した。今回は、描画品質を「最高品質」に設定した上で、フルHD、WQHD、4Kの3種類の解像度でチェックした。

 FF14ベンチマークでも、3DMarkと同じく、全ての解像度でRTX 3080 Tiがトップスコアとなっている。3つのGPUのスコア差は、フルHDでは10%未満に収まるが、4KではRTX 3080比で10%ほど、RTX 2080 Ti比で28%ほどスコアが高くなる。

 この手のハイエンドGPUでは、基本的にフルHDでゲームを楽しむと「うま味」は少ない。高い解像度でこそ、真価を発揮する。RTX 3080と比べても安定したスコアを出していることから、4Kゲーミング環境を構築するならRTX 3080 Tiはベターな選択肢であることが分かる。

FF14ベンチマーク FF14ベンチマークの結果

 もう1つ、重量級PCゲームをベースとする「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」も試してみた。描画品質は「高画質」で、FF14ベンチマークと同じ3種類の解像度で計測している。

 FF15といえば全体的に高負荷なタイトルで、このベンチマークも負荷は高めである。だが、今までのテストと同様に、スコアはRTX 3080 Tiを頂点にRTX 3080、RTX 2080 Tiの順に並ぶ。

 FF15ベンチマークでは、スコアとは別に快適さの指標も表示されるようになっている。RTX 3080 TiおよびRTX 3080は共に、WQHDまでは最高評価となる「非常に快適」を得られる。RTX 2080 Tiでは、フルHDこそ「非常に快適」だが、WQHDでは1段下の「とても快適」となる。

 4Kでは、全てのGPUがさらに1段下の「快適」評価になる。ただ、スコアをよく見てみると、RTX 3080 Tiはあと少しで「とても快適」になる一方、RTX 2080 Tiは200ほどスコアが下がると、さらにランクの低い「普通」になるギリギリの状況だ。同じ評価でも、両者には大きな性能差がある。

 高解像度における描画の安定性を重視するなら、RTX 2080 TiからRTX 3080 Tiへの買い換えは十分に“アリ”だ。

FF15ベンチマーク FF15ベンチマークの結果

PCゲームにおけるフレームレート

  続けて、実際のPCゲームを使ってフレームレート(秒間の描画コマ数)をチェックしてみよう。

 まず、設定次第で極端に高い負荷が生じる「レッド・デッド・リデンプション 2」(ロックスター・ゲームス)のゲーム内ベンチマークテストを実行してみた。基本の画質項目を最も重くなるように設定し、「高度なグラフィックス」設定はAPIを「DirectX 12」に、それ以外は標準設定のままで計測している。解像度はこれまで同様にフルHD、WQHD、4Kの3種類でテストを実行し、平均レートと最小レートを調べた。

 本作のベンチマークモードは、フレームレートがかなり低めに出る上、数値のブレも大きくなる傾向にある。それでも、レートの高い順に並べると、先のテストと同じくRTX 3080 Ti、RTX 3080、RTX 2080 Tiという順番になる。序列に変化はないということだ。

 平均フレームレートを見てみると、フルHDではRTX 3080 TiとRTX 3080が60fpsを超える一方、RTX 2080 Tiはギリギリで60fpsに達しない。負荷の一番大きい4Kでは、RTX 3080 Tiだけが平均30fpsを超えた。

 これまでのテストと比べると、RTX 3080 Tiのみ最小フレームレートが比較的高めに出ていることが興味深い。

レッド・デッド・リデンプション2(フルHD) レッド・デッド・リデンプション2のフレームレート(フルHD)
レッド・デッド・リデンプション2(WQHD) レッド・デッド・リデンプション2のフレームレート(WQHD)
レッド・デッド・リデンプション2(4K) レッド・デッド・リデンプション2のフレームレート(4K)

 続いて、「CONTROL」(レメディー・エンターテインメント)をチェックしてみよう。解像度はこれまでと同様の3種類で、画質プリセットを“高”とした上で、ゲーム内の一定コースを移動した際のフレームレートをNVIDIA純正の「FrameView」を使って計測した。

 なお、このゲームはDXRにも対応しているが、このテストでは無効としている。一方、DLSS(AIベースの超解像技術)は有効にした。

 フルHDでのテスト結果は、これまでと違った傾向が出た。RTX 3080 Tiのフレームレートが伸び悩み、全てのGPUが最小フレームレートにおいてほぼ横並びである。WQHDや4Kでテストすると、今までと同様の傾向となる。

 この結果でも分かる通り、楽しむゲームタイトルと解像度/画質の設定によっては、RTX 3080 Tiは性能を持て余してしまう。フルHDゲーミングを志向するなら、RTX 3080 Tiを選ぶメリットはあまり大きくない

CONTROL(フルHD) CONTROLのフレームレート(フルHD、DXR無効、DLSS有効)
CONTROL(WQHD) CONTROLのフレームレート(WQHD、DXR無効、DLSS有効)
CONTROL(4K) CONTROLのフレームレート(4K、DXR無効、DLSS有効)

DXR対応タイトルではどう?

 DXRを有効にした場合のパフォーマンスはどうだろうか。まず、3DMarkのDXRテスト「Port Royal」の結果を見てみよう。

 結論をいってしまえば、今までのテストと同様にRTX 3080 Tiの優位は変わらない。スコアの開き方の傾向は、高負荷なゲームタイトルと似ている。RTX 3080に対しては9%ほど、RTX 2080 Tiに対しては30%ほどのスコアが良い。

 RTを活用した場合でも、RTX 3080 Tiの優位は変わらないといえる。

Port Royal 3DMark(Port Royal)のスコア

 DXRに対応するゲームを代表して、先ほどもテストしたCONTROLにおいてDXRを有効化した場合のフレームレートをチェックしてみよう。RTの設定を「高」とした他は、先のテストから設定を変えていない。

 やはり、フルHDでのフレームレートは伸び悩むものの、WQHD以上の解像度ではRTX 3080 Tiの優位性が垣間見える。RTX 3080 TiならWQHD以上の解像度でも安定して高いパフォーマンスを発揮できる

CONTROL(フルHD) CONTROLのフレームレート(フルHD、DXR高、DLSS有効)
CONTROL(WQHD) CONTROLのフレームレート(WQHD、DXR高、DLSS有効)
CONTROL(4K) CONTROLのフレームレート(4K、DXR高、DLSS有効)

消費電力は明らかにRTX 3080より多い

 最後に、システム全体の消費電力をチェックしよう。3DMarkのTime Spy Extremeを実行中の最高消費電力を「高負荷時」、PCの起動後10分間何もせず放置した状態後の消費電力を「アイドル時」としてワットチェッカーで計測した。

 アイドル時の消費電力はいずれのGPUも55〜56W前後である。高負荷時のピーク消費電力は、RTX 3080 Tiが482W、RTX 3080が431W、1世代前のRTX 2080 Tiの339Wという結果になった。RTX 3080 Tiはパフォーマンスを高めた分だけ電力消費が増えているということが分かりやすく示されている。

 NVIDIAは、GeForce RTX 3080 Ti Founders Editionを使うシステムに750W以上の電源を使うことを推奨している。システム全体の安定稼働を図る上でも、GeForce RTX 3080 Tiを搭載するPCを組み立てる場合は750W以上の電源を用意したい。

電源 システム全体の消費電力

4Kゲーミング環境を整えるならベターな選択肢

 GeForce RTX 3080 Tiは、4Kゲーミングをターゲットにした、極めて高いパフォーマンスを備えるGPUだ。特に、WQHDや4Kといった高解像度環境ではRTX 3080よりもベターな選択肢である。

 「え、GeForce RTX 3090は?」と思う人もいるだろう。確かに、RTX 3080 Tiといえども、RTX 3090よりもスペックは少し低い。しかし、用途をゲームに絞るとRTX 3090の24GBというグラフィックスメモリ容量は過剰である。価格差もそれなりに大きい。あくまでも「4Kゲーミング環境を整えたい」というのなら、RTX 3080 Tiの方が性能と価格のバランスに優れている

 Founders Editionを見る限り、カードのサイズも2スロット厚とかなりコンパクトに収まっており、極端な使い勝手の悪さは感じられない。「予算をしっかりつぎ込める」という前提条件はあるものの、リッチなゲーム環境を構築したいなら、RTX 3080 Tiは期待に違わぬ働きを見せてくれるだろう。

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