惜しい、悔しい。阪神藤浪晋太郎投手(26)の復活勝利はまたもお預けとなった。670日ぶり勝利を懸けてヤクルト戦(神宮)で今季2度目の先発。7回4失点(自責1)で毎回の10奪三振の力投をみせた。連打を許さず、四球もわずか1つ。味方の失策もあって2敗目を喫したが、矢野監督は「勝てる投球」と次回に期待した。8カードぶりに負け越した阪神は再び勝率5割となり、4位に後退した。
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詰まった飛球が遊撃後方にフラフラと上がる。懸命に追った北條と中堅近本が激突。1度は北條のグラブに入ったボールが芝生に落ちた。まさかの適時失策で2点を追加された直後、藤浪は何事もなかったかのようにマウンドへ歩いた。声をかけた視線の先には、表情に悔しさをにじませる同学年の遊撃手がいた。
「誰もエラーしようと思ってエラーしていない。味方がエラーをした時、ミスが出た時に抑えてこそ。ああいうところでカバーできたらと思っています」
仲間を気遣い、責任を自分に転嫁した場面は1失点で迎えた7回裏だ。北條の失策で先頭打者を出し、内野安打で2死一、三塁。1番坂口の投手正面へのゴロを右手首ではじき、適時内野安打で2点目を奪われた。懸命に試みたジャンピングスローが悪送球となり、なお2死一、三塁。しびれが出た右手首の治療を終えた直後、今度は痛恨の落球で走者2人をかえされ…。そんな気落ちしたくなる展開にも動じない。たくましい藤浪が帰ってきた。
今季2戦目。直球主体で2回に先制点を許すと、3回以降は変化球主体に切り替えた。「前回は変化球が使えなくて苦労したので」。23日広島戦は勝負どころで変化球が入らず、直球を狙われて逆転満塁弾を浴びた。反省を生かし、最速154キロの直球に変化球を交えて的を絞らせなかった。
中でもスプリットと表現した140キロ台中盤から後半の高速フォークが低さ、キレ味ともに抜群だった。115球のうち20球に選択。6回無死二塁からはすべて勝負球で3番青木、5番山崎を空振り三振、4番村上は二ゴロに仕留めた。
今季2敗目。7回4失点ながら10奪三振1四球で自責点は1だ。被安打8も4本が内野安打だった。18年4月20日巨人戦以来、832日ぶりの2ケタ奪三振も記録。矢野監督は「勝てる中身の素晴らしい投球だった」と絶賛した上で「なんとか勝たせてやりたいよね」と力を込めた。
2軍調整していた高橋が1軍ローテに組み込まれる影響で、次回は中5日で8月5日巨人戦に向かう可能性が高い。「結果として負けている。7回のああいう場面で粘れてこそ。ああいうところで粘れるようにしたい」。仲間と笑顔を分かち合うまで、藤浪は満足しない。【佐井陽介】
▼阪神が今季最少の3安打で完封負けを喫した。7月29日ヤクルト戦の1回に1点を挙げた後、17イニング連続無得点。これは6月28日DeNA戦2回から7月1日中日戦2回までの19イニング連続に次いで、今季2番目の長さだ。7月28日ヤクルト戦での20得点という歴史的な打線爆発から一転して「打ち疲れ」が続いている。7月4、5日の広島戦から続いていた連続カード負け越しなしは7で止まった。
2020-07-30 13:56:00Z
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