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Monday, April 25, 2022

「お金の知識の有無で人生の選択肢は変わる」等身大の目線で若者に指南 - 読売新聞オンライン

 今年度から実施された高校の新学習指導要領では、家庭科に投資や資産形成が盛り込まれるなど、「金融教育」が拡充された。しかし、お金の話は難しそうで取っつきにくい。そんなイメージを打ち破ろうとしているのが、「金融教育活動家」を名乗る横川楓さん(31)。「誰よりも等身大の目線」をモットーに、若者らに役立つお金の知識を届けようと日々奮闘している。(社会部 渋谷功太郎)

 「4~6月に残業して給料を多くもらうと、社会保険料の支払いが多くなるから要注意」「住民税は社会人2年目から納めます。後払いのイメージですね」

 今月13日、25歳以下向けにオンラインで開催した資産形成に関するセミナー。手作りした図表入りの資料を示しながら、給与明細の読み方や社会保険料の仕組み、非課税で積み立て投資ができる「つみたてNISA(ニーサ)」などを約1時間にわたって説明した。

 参加者の大学生らからは「投資は少額でも始めるべきか、お金をためてからやるべきか」「ロシアのウクライナ侵攻は、株価にどんな影響を及ぼすのか」といった具体的な質問が次々に飛んでくる。その一つ一つに丁寧に答え、「自分の望む将来を実現するために、しっかりとお金の準備をしましょう」と呼びかけた。

 横川さんが、お金の知識の大切さを実感したのは、中高生の頃だ。

 小学生の時、両親が離婚。母方の祖父宅に一時身を寄せたが、中学入学と同時に母親がアパートを借り、2人暮らしを始めた。祖父宅は庭に池があるほど広くて豪華な一戸建てだったが、引っ越した先は古びていて、部屋のドアは建て付けが悪くきちんと閉まらない。「母子家庭はこれほどお金に困るのか」。あまりの落差に衝撃を受けた。

 高校に入ると、自治体の母子家庭の支援制度を利用できることになり、今度は真新しくてきれいな公営住宅に転居した。国や自治体の支援制度に精通しているかどうかで、生活が様変わりすることを肌で感じた。

 だから、大学に進学後、周囲の友人たちがお金の知識に疎いことが気になった。「投資詐欺に遭った」「あやしい契約を解約したいんだけど……」。どれも切迫した状況なのにあまりに無防備だと感じた。

 世間には家計や金融の解説本が多く出回っている。しかし結婚して専業主婦になることや、マイホームやマイカーを持つことを前提に書かれたものばかり。若者世代には共働き世帯が増え、住宅や自家用車を所有しない生活様式が広がっているから、「古い考え方で、現代に合っていない」と思った。友人にアドバイスするように、若い人と同じ目線に立ってお金の知識を伝える仕事をしようと決意した。

 ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格を取得し、明治大大学院を修了した2015年、25歳で若者に金融教育を広める「お金の専門家」と自称し、活動を始めた。複数の会計事務所で実務経験を積む傍ら、若者向けのウェブメディアやファッション誌に寄稿し、セミナーで講演するなど、地道に金融教育の重要性を訴えた。

 若い女性ということで、嫌がらせもしばしばあった。年上の同業者から「若い世代にお金の知識を普及させても意味がない」とメールでなじられたり、家計相談を申し込んできた男性から「この後、どこに行く?」とセクハラまがいの発言を受けたり。そのたびに「いつか見返してやる」と怒りを活動の原動力に変えた。

 しかし、いくら個人で発信しても興味のある人にしか届いていないように思えた。「より多くの人に金融教育の大切さをわかってもらうには組織が必要だ」と考え、今年1月、同じ志を持つ仲間を募って、一般社団法人「日本金融教育推進協会」を設立し、代表理事に就いた。

 掲げる理念は「誰もが平等に金融リテラシー(金融についての知識や判断力)を身につけ、活用できる社会」。2月に行った設立の記者会見では、「お金の知識の有無で人生の選択肢は大きく変わる。金融教育を多くの人に行き渡らせたい」と力を込めた。

 協会では、SNSや動画投稿サイトにあふれる真偽不明の投資情報に若い人たちが惑わされないよう、金融教育に関する統一のガイドライン(指針)や、金融教育者の認定制度が作れないかと考えている。

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