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Monday, April 11, 2022

【アジアで会う】シャーリー・オンさん ハンドバッグデザイナー 第388回 一期一会のハンドバッグを求めて(マレーシア) マレーシア・その他製造 - NNA ASIA

しゃーりー・おん 1976年マレーシア・クアラルンプール生まれ。ホテルマネジメントの専門学校を卒業後、ホテルに勤務。妊娠・出産後は子育てをしながら事務員として働いていたが、2016年に独学で作り始めたハンドバッグが評判を呼び、自身のブランドを立ち上げた。

シャーリーさんの1日は、早朝5時に始まる。まずは自宅近くに構えるアトリエへ。1つ、2つと手作りのハンドバッグを仕上げてからショッピングモールに向かい、売り場をオープンする。各モールで開かれる催事に出展するほか、3月末にはクアラルンプール中心部の再開発地区「ブキビンタン・シティーセンター(BBCC)」にある、国産品を専門に扱う商業施設「マレーシアグランドバザール(MGB)」に常設の売り場を構えた。

「ソフィア・バイ・シャーリー」というブランド名は、一人娘にちなんで名付けた。立ち上げから今年で6年目となり、日本の帯地や着物生地を使用した独創的なハンドバッグを次々と生み出している。

ハンドバッグデザイナーとしてブランドを運営していく上で、最難関は「タイムマネジメント」だと笑う。起業してからというもの、経営・制作・販売と1人で何役もこなしてきたためだ。ショッピングモールの営業時間は通常、午前10時~午後10時。1日の大半を売り場で過ごし、帰宅すれば主婦業や母親業もある。多忙な日々を乗り越えるため、毎日早起きしなければならないのだという。

例年、クリスマスバザールの始まる11月から春節(旧正月)が終わる2月ごろまでがピークシーズン。首都圏各地の商業施設に出展し、ほぼ休みなく働く。昨年末から今年の春節までの約3カ月間で200個を売り上げた。

帯地や着物生地をハンドバッグにリメークするアイデアは、顧客の要望から生まれた。マレーシアにもろうけつ染めのバティックや浮き織りのソンケットといった伝統的な織物はあるが、シャーリーさんは「ありふれている」とばっさり。その点、日本から仕入れるビンテージの帯や着物は、同じものが2つとないのが魅力だそう。

柄の切り取り方から工夫を凝らし、世界に1つしかないハンドバッグを作り上げる。着物や帯の柄に秘められた日本の文化や歴史になじみのない顧客のために、そのバッグにまつわるストーリーやお手入れ方法などを記したメッセージカードを1点1点に添えている。

一番人気は、中国・清王朝の服飾文化からインスピレーションを得て、持ち手や金具にドラゴンや花など幸運のシンボルをかたどったヒスイをあしらったシリーズ。ヒスイは華人にとってお守りのような存在。色合いもいわゆる「ヒスイ色」の濃いグリーンから、白や紫、黒、琥珀(こはく)のような茶系のものまでさまざま。ヒスイと組み合わせることで、日本の伝統柄がモダンファッションにもマッチするハンドバッグに変身するから不思議だ。通常のハンドバッグは400リンギ(約1万2,000円)前後から販売しているが、大ぶりのヒスイをあしらった特注品ともなると、1万リンギ以上するものもあるという。

将来的には、自らの店を持つのが夢だというシャーリーさん。店を構えて生地選びやデザインから顧客の要望に合わせたオーダーメードを展開し、「いつでも気軽に好きなものを選びに来てもらえるような、そんな関係を築いていきたい」と語る。一方で、ふらりと立ち寄った客との思いがけない出会いがある催事を続けていきたいという思いもある。女性を輝かせる、世界に1つだけのハンドバッグ作りは続く。(マレーシア編集部・降旗愛子)

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