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Thursday, February 17, 2022

<#不登校> オンラインで広がる選択肢 自宅へ授業生配信 - 中日新聞

 国のGIGAスクール構想により、二〇二一年に全国の小中学校で一人一台のタブレット端末の配備が広がった。新型コロナウイルス禍での休校や学級閉鎖時に学びを止めないためだけでなく、不登校の児童生徒ら向けに普段から端末を活用する動きも出ている。全市立小中学校で不登校の子どもがオンラインでも授業に参加できるようにした岐阜市の、ある中学校を訪ねた。(北村希)

授業の生配信を見ながらノートをとる別室登校の生徒=岐阜市内の中学校で(一部画像処理)

授業の生配信を見ながらノートをとる別室登校の生徒=岐阜市内の中学校で(一部画像処理)


 別室登校の生徒が集まる教室。学年の違う三人が静かに机に向かっていた。机の上には教科書、ノート、タブレット端末。耳には端末につながったイヤホン。それぞれの端末には国語、社会、英語―と、所属学級の授業が生配信されていた。

 別の教室では三年生の理科の授業中。三脚に固定された端末は黒板を写し、新型コロナワクチンの副反応で休んでいた生徒に向けて配信されていた。配信画面はクラスの生徒であれば見ることができ、一番後ろの席で黒板が遠い生徒が手元の自分のタブレットで閲覧することも。班での実験の時は、一人の生徒が配信用端末を持って撮影係となり、実験の様子を届けた。


別室登校や入院生徒にも広がる


 この中学校では昨年四月から、不登校の生徒向けにウェブ会議アプリ「チームズ」の機能を使って翌日の予定や板書の写真を共有する。担任が「元気?」などとメッセージを送り続け、夏休み明けから学校に来た生徒もいる。九月にはチームズを使って授業の生配信を開始。配信の利用は、集団が苦手な別室登校の生徒や、病気やけがで入院した生徒、感染が不安で登校を控える生徒にも広がった。

 現在は不登校などにより四人が自宅から参加している。配信希望者のいるクラスでは、いつでも参加できるようにと毎時間配信する。個人情報保護の観点から生徒は写さず、黒板の画面や手元だけを写すようにし、録画はしていない。

 他にも昨年十月にはオンラインで生徒会選挙を実施し、自宅にいる生徒も投票ができた。教頭は「さまざまな個に応じた活用方法を見いだしたい。そのためにも、とにかく使ってみることが大事だと感じている」と話す。

 一方、配信用に端末を使うと、パワーポイントなどを操作する端末が足りなくなり、教員同士で貸し合って対応することも。配信先の生徒の疑問にその場で応じる双方向のやりとりも今後展開したいが、業務が増えるため「教員が足りない」のも悩みだ。


先駆けた整備が奏功


 岐阜市教育委員会によると、同市では二〇年九月に端末の配備を完了。中部地域では珍しい「通信回線の契約付き」で、家庭の通信環境に関係なくネットに接続できることもあって、児童生徒らは当初から自宅へ持ち帰っている。不登校の児童生徒らを対象にした授業の生配信を、希望者のいる全市立小中学校で実施しているのも「全国に先駆けて環境が整った結果だ。おかげで子どもたちの選択肢を増やすことができた」という。教員たちのスキルアップのため、各校の「ICT活用推進教師」が情報交換する仕組みを設け、すべての教員がオンラインで共有できる実践集も作成している。


出席扱い実績少なく 端末活用にも差


 文部科学省は一九年十月、「定期的な対面指導を前提とする」「計画的な学習プログラムである」「学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けられないような場合に行う学習活動である」といった条件を満たせば、不登校の児童生徒がオンライン授業などの情報通信技術(ICT)を活用した際に、出席扱いにできるとする通知を出している。

 二〇年度の文科省の調査によると、全国の不登校の小中学生は十九万六千百二十七人で過去最多。そのうち自宅でのICTなどを活用した学習を出席扱いとした児童生徒は、二千六百二十六人にとどまる。岐阜市では不登校の児童生徒がオンライン授業などに参加した場合、文科省の通知にのっとって「出席」や内申に影響しない「出席停止」の扱いにしているが、出席の条件を全て満たすには「ハードルは高い」という。

 そもそも、端末の持ち帰りやオンライン授業の活用状況は、自治体や学校によって差がある。二一年七月に配備を完了した名古屋市では、頻度は学校によるが全校で持ち帰りを実施。不登校の児童生徒へのオンライン授業実施数は「把握していない」(同市教委)。津市は二一年度、モデル校四校で持ち帰りに。通信環境が不十分な家庭もあり、全小中学校に広げるのは二二年度以降になる見通し。


#わたしの体験談/岐阜県各務原市の女子生徒(17)

 ▽不登校はいつから、どうして?
 私は、小学校高学年から続くいじめと、先輩との上下関係が厳しくなったり、規則がいきなり増えたりといった「中1ギャップ」に耐えることができませんでした。中学1年の夏ごろから徐々に休み始め、中学2年のころには完全に不登校の状態になりました。

 ▽今は?
 通信制高校に通いながら、「教師になる」という夢に向かっていろいろな活動をしています。ボランティアや講演会などに参加して他の人の生き方を学んでいます。フリースクールで教えていただいたアクセサリー作りを生かして、今では作品をマルシェで販売し、人との関わりを学んでいます。

 ▽世の中や学校に言いたいことは?
 私が学校を休み始めるのには、親が世間体を気にしたため長い時間を要し、その間もつらい思いをしながら学校に通っていました。周囲の大人も人と違うことを恥だと思わず、まずは話をよく聞き、受け入れ、尊重してほしいと思います。また、不登校という道を選んだ人に対して、悲観的に思わないでほしいです。私は、この経験を良いものだったと思っています。

 ◇
 あなたの不登校体験、今どうしているか、世の中や学校にぶつけたい思いを教えてください。
 中日新聞教育報道部
 kyoiku@chunichi.co.jp

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