ウーバーイーツの配達員が会社側と団体交渉をする権利を認めるよう求めた紛争で、東京都労働委員会が配達員側の主張を認めれば、けがの補償や報酬などで、配達員らに交渉の道が開かれる。他のプラットフォーム企業で働く人の間でも連帯の動きが強まることが予想され、影響は大きい。結論は6月にも出る。(池尾伸一)
◆働く人の孤立進む
近年、企業の枠を超えた働く人同士の「横の連帯」は弱まり、それぞれが孤立する傾向にある。
労働者全体のうち、労働組合に加入する人の割合を示す組織率は昨年16.9%で、30年前(24.5%)から低下。6人に1人しか労組に加入していない。労組は従来、正社員の組合員を中心に運営されており、非正規社員の割合の高まりが組織率の低下に影響している。労組の役割低下は賃金の伸び悩みを招き、経済を一段と悪化させる悪循環にもつながっている。
ギグワーカーの増加は、労働市場をさらに不安定化させる要因になっている。労災保険や最低賃金を欠く不安定な労働環境にもかかわらず会社側と雇用関係がないため、「労組をつくり声を上げる権利すらない」とあきらめる人は多い。
こうした中、ギグワーカーにも団交権が認められれば、待遇改善を正面から要求できる。ウーバーの配達員はギグワーカーの象徴的な存在。それだけに、他の企業の傘下で働くギグワーカーの間にも、結束して声を上げる機運が高まる可能性がある。
◆海外で進む法的保護
ただ労働問題に詳しい龍谷大の脇田滋名誉教授は「働く人任せだけでは、限界もある」と言う。
都労働委員会がウーバー側に救済命令を出しても、ウーバー側は中央労働委員会に再審査を申し立てたり、裁判所に命令取り消しを求める訴訟を起こすことができる。結論までに何年もかかる可能性がある上、団交が始まったとしてもユニオンの要求がどこまで通るかは不透明だ。
一方、海外ではギグワーカーをめぐり、独立性や競争力の高い一部フリーランスとは区別して保護策を講じようとしている。欧州連合(EU)は昨年末、企業側が報酬水準を決定し就労状況をデジタル機器で管理・監督しているなどの場合、労災保険や社会保険の対象とする法案を公表した。
これに対し日本政府はギグワーカーを自営業者とみなし、保護策を講じてこなかった。脇田氏は「政府はギグワーカーを保護すべき労働者として定義し、労働環境の改善に積極的に動くべきだ」と主張する。
労働委員会 労働組合と会社の間の紛争を解決するための第三者機関。都道府県ごとにあり、国には中央労働委員会がある。学識経験者からなる公益委員、労働者を代表する労働者委員、企業などを代表する委員の3者で構成。会社と労組の双方の証人から状況を聞く審問などを経て、会社の対応に問題があると認定すれば救済命令を出す。
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