富山大講師 種市医師に聞く
新型コロナウイルスワクチンを巡り、富山県内では十二〜十五歳の接種が今月から本格化する。富山大講師(小児科学)で、富山市立学校新型コロナ対策検討会議座長の種市尋宙(たねいちひろみち)医師(48)は、感染時の重症化リスクが低い半面、副反応が強く出る傾向にある子どもの接種について「負担を負うだけのメリットがあるのか。子どもたちの考えを重視しているのか。接種を迷っているならば(安全性を示す)データが出てくるまで待機してもいいのではないか」との考えを示した。 (広田和也、写真も)
オンラインで本紙の取材に答えた。接種自体は「接種が進む高齢者の感染状況を見れば、有効性は間違いない」と大人の接種は推奨。基礎疾患があり、重症化リスクを抱える子どもの接種にも賛成する。
一方で、米国が八月に報告した六万人の接種データによると、十二〜十五歳は頭痛、発熱などの副反応が三分の二に認められたことを示し、「他のワクチンと違って、副反応が強く出ることが明確。大人ですら仕事を休むのに、子どもがそのリスクを背負って打つべきなのかが社会で議論されていない」と訴えた。
自らが昨年四月から県内の感染した子ども二十人ほどを診察した結果、いずれも軽症か無症状。感染者が多い欧州各国でさえも子どもの死者は他のウイルス感染症に比較してまれだ。「(インド由来の)デルタ株が流行して感染者、有症状者が増えても、子どもにワクチンが必要な脅威と本当に言いきれるか」と疑問を呈す。
副反応強い傾向 有効性間違いない
県内は三世帯同居が多い。子どもが学校で感染したのを機に家族内で拡大する恐れがあるため、各自治体は「強制ではない」としながらも接種を呼び掛けている。「まずは、周囲の大人がワクチンを打つことで、子どもの感染拡大のリスクを下げられる可能性がある」と、親世代の接種を完了させるよう求めた。
ワクチンは開発から一年ほどしか経過しておらず、子どもにおける安全性の面での議論や臨床データが不足していると指摘。接種が進む英国でも健康な十二〜十五歳への接種を行っていない。「世界で子どもへの接種が議論されている。打つべきか、打たざるべきかを悩んでいるならば、待機することが悪いことではない。納得するまで情報を集めて」と語った。
たねいち・ひろみち 新潟市出身。1998年、富山医科薬科大(現富山大)医学部卒業、2007年に富山大医学部大学院博士課程修了。小児救急と集中治療が専門で、19年に現職。11年に起きた「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件で危機対応を担ったほか、富山市立学校新型コロナ対策検討会議の座長を務める。
リスクの議論不足 問題 信頼得る情報提供 必要
種市医師 一問一答
−子どもが接種する意義は。
米国のデータを見ると、高齢者より若年者の方が副反応が強く出る。わずかだが心筋炎になる可能性も分かってきた。他のワクチンと違って、副反応が強く出ることが明確で、大人ですら仕事を休むほどつらいのに、子どもがそのリスクを背負って打つべきなのかが社会で議論されていないのは問題だ。子どもたちはどう考えているのか、大人たちはそこを軽視していないだろうか。
−子どもを介して感染を広げるケースが懸念され、接種を勧める声は強い。
コロナの感染を恐れる子どもたちはいるので、安心のために接種することは全く否定しない。ただ、重症化の恐れがある親世代がまず打てば大きな問題にはならない可能性がある。まだ打たなきゃいけない大人たちが残っている。その人たちの接種を急ぐべきだ。
−接種するかどうか迷う家庭も多いはず。
ワクチンができてまだ一年。子どもに対してウイルスの強毒性が増したら接種する必要は出てくるが、国内の感染状況から見ても、接種を強引にするほどの焦る時期だと言い切れない。今後、不活化ワクチンなど副反応が少ない製剤も出てくるかもしれない。悩んでいるのならば、安心できる状況になるまで待機をしてもいい。
−行政や医療機関から接種を検討するために必要な情報提供が少ない。
いまはデータが少なく、医学的な説明が不十分な状況ではあるが、信頼してもらうためにも情報提供は必要。富山市教委には保護者たちが接種をどのように考えているか、どんな情報が必要なのかの調査を依頼したいと思っている。双方向で議論を進める必要がある。
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