プロ5年目の楽天西口が緊急登板の中で持ち味を発揮した。初回、先発高田孝が頭部死球を与え危険球退場。1点を先制され、なお2死一、三塁の厳しい場面で登板したが、甲斐を左飛に打ち取りピンチをしのいだ。

5回まで打者14人のうち12人に対し、2球目までにストライクを取っていた。ストレート、カットボール、ナックルカーブ、チェンジアップのどの球種でもカウントを整えていたのが良い。初回の甲斐、5回の三森以外は、このストライクゾーンで勝負した結果が、プロ初勝利につながった。

楽天には強力な先発陣が控えるが涌井、早川がローテーションを外れ、田中将も本調子とは言えない。そうした中、次の先発の座を狙う高田孝が退場。緊急登板でめぐってきたチャンスに西口は結果で応えた。3回は3連続三振を奪い、栗原のソロ1本に抑えた内容も、この試合に限れば良かったと言える。

敗れたソフトバンクに目を移すと、「2番中堅」でプロ初スタメンの佐藤直が光った。初回は四球で出塁。柳田の左前打に盗塁のスタートを切っていた佐藤直は、左翼島内のファンブルを見逃さず生還。俊足をアピールした。

守備でも判断の良さを感じさせた。1回2死満塁。打者茂木の打球は、フルカウントから左中間へ飛んだ。佐藤直はダイビングキャッチを試みたが、わずかに届かず走者一掃の三塁打。

この判断について補足すると、茂木の打球は左中間を破っており、2死でのフルカウントということで、走者は一斉にスタートを切っている。飛び込まずに追い掛けたとしても、一塁走者の生還は防げない。そうした状況を頭に入れ、わずかの可能性にかけて飛び込んでいる。このプレーで唯一のデメリットは、打者走者を三塁に進めたことだけだろう。

打球判断で難しいのは、状況を理解した上で可能性にかけてチャレンジするケースと自重するケース。果敢に挑戦する判断の方が、自重よりも難しい。行く時は行く。そういう点で、佐藤直がトライするべきという根拠の元に飛び込んだのは、素晴らしい決断力と言えた。いずれビッグプレーでチームを救う日も遠くはないと感じる。

楽天が逃げ切ったが、両チームともに若手選手が躍動した。後半戦へ向け、オリックスを含めた激しさはまだ続きそうだ。(日刊スポーツ評論家)

楽天対ソフトバンク 1回表ソフトバンク1死一塁、柳田悠岐の適時打から生還した佐藤直(右)を迎える工藤監督(中央)(撮影・滝沢徹郎)
楽天対ソフトバンク 1回表ソフトバンク1死一塁、柳田悠岐の適時打から生還した佐藤直(右)を迎える工藤監督(中央)(撮影・滝沢徹郎)