[ワシントン 2日 ロイター] - ミャンマー国軍が軍事クーデターで政権を掌握したことを受け、バイデン米大統領は就任後初めて大きな国際危機に直面している。民主化回帰に向け圧力を加えるため、新たな制裁プログラムの発動や援助削減、軍高官や軍系企業を対象とする措置などを打ち出す可能性がある。
バイデン大統領は外交政策で人権を再び中心に置き、同盟国とより密接に協力するという2つの約束を示しており、政権の対応が早くも試されることになる。
バイデン大統領は1日、ミャンマーで発生した軍事クーデターを受け、米国が「適切な行動」を取ると表明し、ミャンマーに対する制裁復活の可能性を示唆。米国がこれまでに「ミャンマーの民主化に向けた進展を踏まえ制裁を解除してきた」とし、「こうした進展の反転を受け、制裁を巡る規則や権限を直ちに見直す必要が生じ、適切な行動が伴う」と声明で言明した。
米財務省で制裁担当シニアアドバイザーを務めていたピーター・クチック氏は、ミャンマー情勢に関して国家非常事態を宣言する大統領令によりバイデン氏がミャンマーに対する新たな制裁プログラムを構築する可能性があるとみる。
クチック氏によると、こうすることによってバイデン政権は「クーデターに対する見方や要望」を示し、結果的に圧力をかけることができるようになる。バイデン氏は国際緊急経済権限法(IEEPA)の下でこうした大統領令を発する幅広い権限を持つという。
ミャンマーとの開放的な経済関係を維持したいと考える一部企業はこうしたアプローチに反対するとみられる。ミャンマーでの米企業活動を担当するある関係者が安全面の理由で匿名で明らかにした。この関係者によると、新政権は非合法とのシグナルを送ることになるクーデター主導者や権力掌握後に軍によって指名された高官に対する的を絞った制裁を、投資家は支持する見通し。
ただ権力を掌握した軍高官に対する米国の影響力は限られるとの見方もある。ミャンマーの軍高官は地元企業と強力なつながりを持つが、金融制裁によって影響を受ける可能性がある海外での権益をほとんど持っていない。
ミャンマー軍高官に対する過去の制裁の効果も議論されており、一部では軍高官にほとんど影響を与えず、一方で多くの人々を貧困にしたとの見方も出ている。また、軍高官の大半は「グローバル・マグニツキー人権問責法」の下で既に制裁を受けている。
オバマ政権下で米国務次官補(東アジア担当)を務めたダニエル・ラッセル氏は「単にミャンマー軍への制裁を積み重ねるだけではこの問題は解決しないだろう」と指摘。「今回の危機を解決し、ミャンマーにおける民主的な統治と改革への回帰に向けた道のりを示すためには、2国間と多国間双方での持続的で熟練した外交が必要だ」と述べた。
<軍系企業>
ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの国際人権団体は、ミャンマー軍が運営する企業を標的にするようバイデン大統領に呼び掛けている。
トランプ前米大統領の下でグローバル女性問題担当特使を務め、政権のミャンマー政策に深く関与していたケリー・カリー氏によると、国務省高官はイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害問題でミャンマー軍の主要企業2社に対するマグニツキー法に基づく制裁を2018年に準備したが、実行されなかったという。
同氏は「24時間の出来事に基づいて財務省は再び取り上げ、早急に進める可能性がある。そうすべきだ」と述べた。
バイデン大統領によるその他の選択肢には、マグニツキー法に基づくさらなる制裁発動が含まれる。これは制裁対象者の米国資産凍結や制裁対象者と米国人のビジネス禁止措置だ。
また、ミャンマーの軍事政権を対象とした2008年の「JADE法」による制裁権限を復活させる可能性もあるほか、ミャンマー高官やその家族に対する渡航禁止措置も見込まれる。
バイデン大統領とブリンケン米国務長官は、権力を掌握したミャンマー軍を非難しているものの、今回の事態を「クーデター」と指摘していない。
米国法では、軍事クーデターとの決定は米国による一部金融支援が打ち切られることを意味する。衛生プログラムや災害救助向けなどの米国のミャンマー支援総額は2020年に6億0650万ドルとなっている。
国務省報道官は、ミャンマーでの事態は「クーデターの要素がある」としつつ、評価を下す前の法律と事実に基づく分析を進めていると述べた。
(Simon Lewis記者、Humeyra Pamuk記者、Daphne Psaledakis記者)
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