綱とりに挑む大関貴景勝(24=常盤山)にいきなり土がついた。小結御嶽海との押し合いに屈して黒星発進。本割での対戦成績が9勝9敗と伯仲している実力者に、痛い敗戦を喫した。苦しい船出となったが、昭和以降、初日黒星でも横綱に昇進した力士は6例ある。かど番脱出を目指す正代、朝乃山の2大関は、明暗が分かれる結果となった。

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最注目の貴景勝が土俵を割ると、大声での声援禁止を呼びかけられている観客からも思わず悲鳴が上がった。綱とり場所で初日黒星。場所前から平常心を強調し続けてきた貴景勝は「自分では全然いつも通り(の緊張)だった」と、言葉少なに振り返った。

2連勝していた直近の取組のように、立ち合いから圧倒できなかった。何度も当たり合ったが御嶽海を押し切れない。最後は我慢できずに引いて呼び込んでしまった。2年前の大関昇進前は5連敗するなど、一時期は分が悪かった。「勝たないと意味がない」と悔しさをにじませた。

痛い黒星となったが、ファンの存在を力に変えて巻き返しを期す。コロナ禍で開催も危ぶまれた今場所。「こういう状況だけど、出られている力士は一生懸命やることで活力になればと思っている」。1日あたり5000人を上限に観客も入った。「自分が少しでも何か影響を与えられるように、気持ちで頑張っていきたい」。初日黒星から昇進を決めた例は、2日目から14連勝した千代の富士ら6人いる。両横綱の不在により、看板力士としての期待も一層高まる24歳の真価が問われる。【佐藤礼征】

▽八角理事長(元横綱北勝海) 貴景勝は突っ張りながら距離を保とうとしたが御嶽海は押し込もうという意識が強かった。距離がなくなり最後は俵を背に我慢しきれず引いてしまった。初日に負けて優勝した力士はたくさんいる。あとは開き直ってやるしかない。