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Sunday, July 19, 2020

[木村草太の憲法の新手](132)長期にわたるコロナ対応 我慢より快適さ実現へ努力を 社会豊かにする選択肢の多様さ - 沖縄タイムス

 新型インフルエンザ等特措法に基づく緊急事態宣言は、5月末に解除された。しかし、東京では、連日、多くの新型コロナウイルスの感染者が確認されている。沖縄でも、米軍基地でのクラスター発生が発表され、緊迫した事態が続く。多くの専門家は、新型コロナについて、今後も長期にわたる対応が必要になるだろうと予測している。

 今後について考えるうちに、熊谷晋一郎氏の議論に思い至った。熊谷氏は障がいがある小児科医で、当事者研究にも造詣が深い。今回は、東京都人権啓発センターの広報誌「TOKYO人権第56号(2012年)」に掲載されたインタビューを紹介したい。

 熊谷氏は、「自立」の反対語は「依存」ではないと述べる。大地震のとき、健常者なら、エレベーターが止まっても階段やはしごに依存して移動できる。他方、障がい者は、エレベーターしか依存先がない。このように、健常者には、依存先が複数ある。障がいとは、依存先が限られてしまうことだ。熊谷氏は、自立とは、豊富な依存先があり、日常的にそれを選べることなのだ、と言う。障がい者が依存できる選択肢を豊富にすれば、障がい者は自立できる。障がい者の依存先増加は、健常者の選択肢を増やすことにもつながるだろう。

 コロナ対策でとられる施策についても同様のことが言える。例えば、通学困難な状況下、全国の学校で遠隔授業が試みられた。これにより、個々の児童・生徒によって、適合する授業形態が違うということが、実例として浮かび上がった。教師と対面しないと集中できない子も少なからずいる。他方、通常授業では居心地悪そうにしていた子が、家庭でのオンライン授業なら積極的に取り組めたという例もある。動画やドリルで勉強を進めた方が効率的に時間を使えると感じた児童・生徒もいるだろう。

 職場でも、事情は同じで、テレワークが向いている人もいれば、そうでない人もいる。

 いま、学校でも職場でも、急速に緊急事態宣言前の状況に戻りつつある。しかし、新型コロナウイルスは撲滅できておらず、再び大規模な自粛要請が生じたり、罰則付きの外出制限のための法律が制定されたりする可能性は否定できない。だとすれば、遠隔授業やテレワークの推進や環境整備は引き続き進めるべきだろう。これはコロナ対策になるだけでなく、学び方や働き方の依存先を増やし、さまざまな人の自立の可能性を開くことにもつながる。従来型の対面授業や出勤が性に合う人でも、体調不良のときなどは、普段と異なる選択肢があった方が良いだろう。

 今回は緊急事態によって、普段なら実現しなかったような学習形態・仕事形態が実現した。では、通常時から社会の可能性を開くには何が必要か。各当事者が不便さを我慢せず、声を上げることだろう。「こんなことに困っている」との声を上げる人がいなければ、個々の事情に合わせた環境整備は検討すら始まらない。

 「みんなで我慢する努力」より、「より快適な環境の実現に向けた努力」の方が絶対に楽しい。自立のための選択肢の多様さが、社会を豊かにするだろう。

(東京都立大教授、憲法学者)

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July 19, 2020 at 11:00AM
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