衝撃が走った。新型コロナウイルスの感染拡大で今夏開催予定だった全国高校総合体育大会(インターハイ)の中止が決定。26日に全国高校体育連盟(全国高体連)がオンライン上で臨時会議を開き、苦渋の決断を下した。1963年から毎年行われてきた30競技の高校日本一を決める同大会の中止は史上初めてとなる。
今夏実施予定とされていた東京五輪・パラリンピックの影響で競技会場や宿泊施設の確保が難しく、関係者は腐心しながら21府県での分散開催を決めて準備を進めていたが、感染リスクを考慮して断念せざるを得なかった。
同大会の開催日程は8月10日から24日。8月17日から25日に東海4県において行われる予定で16競技の頂点を決める全国中学校体育大会(全中)も中止の方針が決まっており、今週中に都道府県レベルの中学体育連盟などに通達される見通しとなっている。今夏の中高・全国体育大会が揃って中止となったことでさらに暗雲が垂れ込めてきたのが、第102回全国高等学校野球選手権大会だ。いわゆる夏の甲子園である。
今夏は8月10日から25日まで甲子園球場で開催される予定で、中止が決まった中高の2大会のスケジュールと重ね合わせると同じ日程。夏の甲子園を主催する日本高校野球連盟(高野連)は全国高体連に加盟している組織ではないものの、さすがにインターハイの中止について我関せずとはいかない。
これを受け高野連側はメディアを通じ、夏の甲子園開催に「直接影響してくるかは分からない」としながらも、全国高体連の大会中止に至るまでの様々な検討内容を参考にする考えについて示した。
高野連は5月20日に運営委員会を開き、大会の開催可否について議論する。しかし、これはもう普通に考えれば残念だが中止が濃厚だろう。新型コロナウイルスの感染収束の時期が見えにくい今、同時期の中高2つの全国体育大会は涙を飲んで苦渋の決断に至ったにもかかわらず、同じ日程の夏の甲子園だけが「開催」の道を選ぶとなれば間違いなく世間から猛反発を受けることになる。
さすがに高野連側もいくら4カ月半先の8月上旬とはいえ、この状況下でスタンドに客を入れて開催できるとは思っていないだろう。それでも仮に無観客試合として開催を強行し、期間中に選手やチーム関係者、あるいは大会スタッフらの中から感染者が1人でも出れば主催者を含めた運営サイドの責任問題に発展することは必至。下手をすれば、伝統ある大会の存続自体が危ぶまれる流れにもなりかねない。
しかも全国の高校は今、一斉休校中。肝心の学業にも大きな影響を及ぼしている。休校要請の解除は今後、一斉ではなく地域ごとに通達される可能性が高い。そうなれば再開、あるいは延長と各地域の高校によってバラつきも出てくるだろう。大会開催を今秋にズラすなどの延期措置についても、ただでさえ高校生たちが学業に支障をきたしている現況を考えれば教育理念に反する。夏季休暇中以外の日程に授業をおろそかにしてまで大会スケジュールを組み込むことになり、参加球児たちは補習すべき学習カリキュラムにも取り組めず、さらなる学力低下を招く危険性も生じてくる。
すでに高野連は今年3月11日、8日後に開催予定だった第92回選抜高等学校野球大会(春のセンバツ)を史上初の中止としている。同大会を主催する毎日新聞社と協議の末、ギリギリまで無観客試合での開催を模索したものの結局取りやめた。今春のセンバツに出場予定だった某高校野球部のコーチは「大変残念ですが、今年の夏の甲子園も9割方、中止だと思っています」と打ち明け、こうも話している。
「メンバーたちのことを考えたらもちろん、開催はしてほしいですよ。3年生は春に続いて最後の夏までチャンスを奪われてしまうわけですし、そうなってほしくないとは誰もが願うこと。ただ、それはコロナの問題がなければの話です。東京五輪の中止が決まり、インターハイ、全中も辛い決断をした。それなのに高校野球だけ、やりましょうではさすがにおかしいということになるでしょう。野球だけが特別じゃないですから。
もし中止にしなければ猛烈に批判され、風当たりが強い中で子どもたちはプレーしなければいけなくなる。しかも感染リスクもあるわけですから逃げ場すらない、完全な四面楚歌です。本来ならばサポートしなければいけない立場の私たちだって、彼らをフォローできる自信がない。せっかくの夢の舞台なのに、そんなことになったら逆に子どもたちはかわいそうです」
予定通りであれば、夏の甲子園の代表校を争う各地方の戦いは6月下旬から南北北海道大会10支部の予選を皮切りにスタートする。前出のコーチが属する高校の部員たちも誰もが春の″リベンジ″に向けて、夏こそ聖地に立ちたいと願っているはずだ。
2020-04-28 03:20:12Z
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