国本女子中学校・高等学校(東京都世田谷区)は2020年度から、日本とカナダの高校卒業資格を同時取得できる「ダブルディプロマ(DD)」と、キャリアデザインを重視し、総合的な教養を育てる「リベラルアーツ(LA)」の2コースを開設する。改革の旗振り役は昨年度、校長に就任した島野英一氏だ。元・商社マンの経歴を持つ島野校長ならではの知見が光る2コースの内容を紹介する。
島野校長は商社に約40年間勤め、40以上の国でビジネスに携わった経歴を持つ。2017年に国本女子の事務長に就任し、昨年度から校長の任に就いた。
「国本女子はこの数年、時代にふさわしい教育への転換を目指し、抜本的な改革を模索してきました。『外部の視点も交えて大胆に改革したい』ということで、縁あって私に話が来ました」
改革に着手する前に、他校の視察や教育関係者などへのヒアリングを重ねた。その中で痛感したのが、実践的な英語教育に対する保護者の関心の高さだったという。
「自分の経験でも英語の重要性は痛感していましたが、英語教育に力を入れている学校は既に数多く、本校としての特色をどう打ち出すのかが課題でした。それも早急に着手しないと、時代の変化に追いつけません」
検討の末に着目したのが、外国政府の教育部門が認定するカリキュラムに沿った教育を行い、その国と日本の高校卒業資格を同時に取得させる「ダブルディプロマ(DD)」プログラムだ。「留学と同等の教育を受けるシステムで、本場の語学力だけでなく異文化理解の素養も伸ばせ、海外進学のアドバンテージも得られるなど、グローバル時代の教育として非常に有用なプログラムと考えました。日本でまだ導入校が少ないことも強みになります」
DDプログラムを提供している国はいくつかあるが、島野校長は商社時代にさまざまな国を見た経験から、カナダに着目した。「英語圏の中でも文化的に洗練された国で、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の結果に見られるように学力水準が高く、教育格差も少ない。それに、文化水準の近い日本に対して親近感を持っている国です」
カナダの教育は、州ごとにカリキュラムが組まれている。島野校長はカナダ大使館の教育担当の商務官に意見を求め、『教育に最も熱心でレベルも高い』と推薦を受けたアルバータ州と提携した。今年4月、グローバル教育に力点を置く中高一貫の「DDコース」と「LA(リベラルアーツ)コース」を新設することになった。
DDコースの生徒は6年間、同校内に開校するアルバータ州政府認定の海外校「KAIS(Kunimoto Alberta International School)」と、国本女子両校の授業を受ける。
「KAIS」中学プログラムの特色は、週12時間の英語の授業のうち、中1でも5時間、中3では10時間を、アルバータ州の教員による「ELA(English Language Arts)」の授業とすることだ。
ELAは日本で言えば国語の授業にあたり、小説や論説文、詩をはじめ、広告やニュース、漫画など幅広い分野の英語を対象として学習や表現活動に取り組む。討論やプレゼンテーションを柱とした授業も展開される。このほかの英語の授業は、日本人の教員による英文法の学習や、ネイティブと日本人の教員によるチーム・ティーチングで英語4技能を磨く。
高校に進むと、「KAIS」では全教科の授業がオールイングリッシュで進められる。 「その授業に対応できる英語力を中学3年間で鍛え上げます。入学時に必ずしも英語が得意でなくとも、本人が努力すればきちんとそのレベルに上がれるようにしたい」
「KAIS」高校プログラムでは、アルバータ州の高校と同様の授業が展開される。これも生徒にとって大きなメリットになるという。「現地の高校は、生徒が主体的に課題を発見し、問題解決を行うアクティブ・ラーニングが主流です。また、科学・技術・工学・数学に芸術を融合させた『STEAM教育』も定着しており、欧米の数学・科学の最新の知見に触れることができます。日本の学校ではまだ模索中の教育方式ですが、『KAIS』ではその最先端の授業が受けられるわけです」
KAISでは、カナダで教えられる知識や世界観にも触れることになる。「アメリカの社会学者ミルトン・ベネット教授が提唱した『異文化感受性発達モデル』によると、異なる文化や価値観を受け入れ尊重することが、言語の上達にもつながるとされています。国際感覚が身に付くとともに、英語力にもさらに磨きがかかる相乗効果が期待できます」
二つの学校の単位を取得するため、一般の学校より授業時間は増える。中1では平日が7コマ(各45分)、土曜が4コマで週39コマ。高校では週46コマとなり、うち3分の2が「KAIS」の授業となる。「DDコースで6年間しっかりと学ぶことで世界の人々と対等に議論し、心の交流ができる高い語学力が身に付きます。生徒にも相応の努力が求められますが、高い語学力はもちろん、これからの社会で必要になる、物事の本質を深く理解し、自身で考える思考能力や、問題解決能力が育まれる価値は大きいと考えます」
国内で身に付けた力を試すため、DDクラスの生徒は全員、中3で3~4週間、高2で6~7週間、アルバータ州の学校でサマープログラム研修を受講する。さらに、1年間の現地校留学プログラムも用意されている。
「両国の高校卒業資格は、AO入試や推薦入試の際に大きなアドバンテージとなるでしょう。カナダの大学への進学資格はもちろん、欧米各国への進学に必要な資格を得る実力も育ちます。将来の選択肢は日本の難関校だけでなく、世界に広がります」
同時にスタートするLAコースはキャリアデザインを重視し、文理の垣根を越えた総合的な教養を身に付けることを目的とする。
LAコースでの英語の授業は中学校で週8時間。アルバータ州の教員を含むネイティブの教員と日本人の教員によるチーム・ティーチングで4技能をバランスよく学ぶ。その他の教科ではアクティブ・ラーニング型授業を取り入れ、主体的な課題発見や学び合い、プレゼンテーションに力点を置いた授業を展開する。
中学校で「総合学習」の授業を4時間設けているのも特徴だ。教科横断型授業や探究活動を行い、STEAM教育の要素も取り入れていく。1人1台のタブレット端末や電子黒板などを活用し、主体的で効率的な学びを後押しし、ICTリテラシーも身に付ける。
キャリア教育として、将来への視点を育てる特別授業も随時実施する。中学では企業のケーススタディー、高校ではさまざまな領域の第一線で活躍する社会人を招いての講演会などを予定している。「しっかりしたキャリア意識を持つことで、専門分野を含め、どんな進路も実現できる力が育つはずです」
新コースに対する保護者や教育関係者の期待は高いようだ。「説明会では質問が多く出るなど手応えを感じますし、併設校である国本小学校の児童の参加も増えました。カリキュラムには自信を持っておりますので、今後できるだけ多くの方々に知ってもらうのが課題です」と、島野校長は気を引き締める。
「日本の教育は、知識・暗記重視から総合評価へと変わり始めたばかりですが、欧米では既にこれが主流です。その中でも先進的なアルバータ州の教育を国内で受けられることは、進学やその先の将来を大きく広げるでしょう。大変な面もありますが、主体性を持って努力すれば、全員が大きな可能性を手にできるはずです。将来への夢を持って頑張る生徒を私たちは待っています」
(文:上田大朗 写真:中学受験サポート)
国本女子中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら。
"選択肢" - Google ニュース
January 27, 2020 at 03:22AM
https://ift.tt/2GnC6Kj
今春新設の2コースで進路の選択肢を世界に広げる…国本女子 - 読売新聞
"選択肢" - Google ニュース
https://ift.tt/369mxRc
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
No comments:
Post a Comment