山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回はミレー「サースフェーNX SD」とミステリーランチ「ウィングマンマルチポケット」を2つ合わせて紹介します。
山岳用の“バッグ”のメインは、間違いなくバックパックだ。それに併用して使う小型バッグには、ショルダーバッグ、サコッシュ、ポーチ、ヒップバッグなどと、さまざまな名称のものがある。とはいえ、ショルダーバッグとヒップバッグはあきらかに異なるものだが、サコッシュやポーチとはどう違うのか? そもそもサコッシュはフランス語で、事実上ショルダーバッグのことではないか? ・・・などと考え始めると、本当はこれらの小型バッグ的なものをひとまとめにする名称があると面倒ではない気がする。山中でのメインがバックパックなのだから、これらは“サブバッグ”ともいえるが、実際は単体でも使えるものに“サブ”というのも本当はおかしい。
余談が長くなったが、今回取り上げるのは、ミレー「サースフェーNX SD」と、ミステリーランチ「ウィングマンマルチポケット」の2つ。どちらも肩から下げて使える“ショルダーバッグ”としてだけではなく、バックパックのショルダーハーネスに取り付けて“フロントポーチ”として使えるのが大きな特徴だ。つまり、バックパックとは別に使い、“行動中にすぐに取り出したいモノ”を入れるのに適した小型のサブバッグ的存在である。
サースフェーNX SDの細部をチェック!
では、まずはミレーのサースフェーNX SDだ。
こちらは表側。サースフェーNX SDはミレーの人気バックパックシリーズ“サースフェーNX”のラインナップのひとつで、メイン素材もバックパックと同じ。丈夫で撥水性が高いコーデュラ®オックス 210D ナイロンが使われている。バックパックと色まで合わせて使うことができ、重量は170gだ。
正面には2本のファスナーがつけられ、それぞれポケットになっている。上部の左右にはフック付きのストラップがつけられ、それとは別に長いショルダーストラップも付属している。
裏面はシンプルだが、薄手のパッドが入り、体に当たったときの異物感を軽減している。
本体の左右は少し上に延び、そこにはバックパックに取り付ける際に使うクリップが付く。また、長いストラップも付属している。
メインのポケットの内側には、さらにメッシュのポケット。
内側は同系色ながら明るい色になっていて、内部に入れたモノがわかりやすい。
そのメインポケットの内側には、キーリング。
ボタンのような部分を押すと、本体から外すことができて便利だ。
ただ、まさに丸い“リング”なので、この部分にカギなどを簡単には引っ掛けることはできず、僕にはちょっと使いにくかった。
そこで、手持ちのカラビナをプラスし、ここでは小型マルチツールを取り付けた。この部分ははじめからリングではなく、小型カラビナかフックのようなもののほうがよかったと思う。
メインポケットの外側には、さらにもうひとつのポケットがある。
マチはないので大きなものは入れにくいが、モノを入れわけるには便利だ。
使いやすくていいな、と思ったのは、指がかけやすいファスナーの引き手である。
ただ、メインポケットはダブルファスナーでどちらからでも開けられるのに、その上のポケットはシングル。こちらもダブルであれば、もっと使いやすくなりそうだ。
本体の上には、手持ちできるループ状のストラップも付いている。たんなるストラップではあるのだが、やはりあったほうが使い勝手はいい。
また、このストラップは後述するテストの際、思いがけなく役立ってもくれた。
サースフェーNX SDをフィールドでテスト
では、サースフェーNX SDをフロントポーチとしてバックパックにつけてみよう。本体の左右のフックをバックパックのショルダーハーネスのプラスチックパーツにかけるだけだから、簡単だ。
パーツの位置などを考えると、やはりミレーのバックパックとは相性がいい。だが、大半の他メーカーのバックパックにも取り付けは可能だ。
取り付け終わると、以下のような状態になる。
写真を撮ってから気付いたのだが、じつはこの位置は下過ぎて使いにくく、実際はここから5cm以上も上に付け直してからテストを開始している。
僕はサースフェーNX SDをフロントポーチとして使いながら、山中を歩いた。
僕は普段、あまりフロントポーチのようなものは使わないので、新鮮な気分である。調子がよければ、今後もこのスタイルで行くかもしれない。
以下はサースフェーNX SDを身につけたまま、ポケットを広げてみた様子だ。おそらく内部の容量は2Lほどもあり、モノがたっぷりと入れられる。
ここではメインポケットにスマートフォンやメガネを入れつつ、その内部のメッシュポケットには薄手の紙の地図を収納している。奥行きがあって深いために中に入れたモノが落ちにくく、とても使いやすかった。
ただ、気になることもあった。歩いているとサースフェーNX SDが胸元でブラつき、一歩ごとにお腹を叩くような感じになってしまうのだ。
とくにモノをたくさん入れて重くなっていると、ボクシングでいえば軽いボディブローを受け続けているような感覚に似ている。サースフェーNX SDを思いっきり上の方に取り付ければ、このブラつきはかなり抑えられるのだが、今度はポケットが顔に近くなりすぎて使いにくくなってしまうのが問題だった。
そこで僕は手持ち用のストラップをバックパックのチェストハーネスにかけてみた。それが下の写真である。
ひと手間かかってしまうものの、なかなかいい感じだ。これだけでブラつきはかなり収まり、いっそう使いやすくなった。
我ながら、よい工夫なのであった。
ところで、サースフェーNX SDは商品名に“SD(=shoulder)”という言葉が入っているように、このようなフロントポーチとしての使用はサブ的なもので、本来はショルダーバッグである。
そこで、本体のフックを付属ストラップに付け直し、次にショルダーバッグとして使ってみた。
こうなると、いわゆるサコッシュと同じ使い方だ。
僕は右利きなので、体の右側にポーチがあると使いやすい。また、ストラップを肩にかければ、フロントポーチをして使ったときのようにブラつくこともないから、腰元あたりに下げて使うこともでき、ますます手を入れやすい。
張りがある生地のためにモノをあまり入れていないときでも立体的な形状を保っていることも、使いやすさをアップさせているようだ。
なるほどな。
やはり商品名の通り、サースフェーNX SDのメイン用途は“ショルダーバッグ”と考えたほうがいい。“フロントポーチ”としての使用はサブ的な機能なのではないだろうか。
なお、500mlペットボトルもすんなりと収まるサイズ感は、単体でも使いやすかった。
サースフェーNX SDはシンプルなデザインゆえに、アウトドアに限らず、街中でも活躍しそうだ。リーズナブルな価格もありがたいと感じた。
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