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Thursday, January 25, 2024

カバンの街・豊岡生まれの純白の鞄「JETTER」。汚れやすい“白”ゆえに起こったゲンバの変化とは - au Webポータル

1000年以上の歴史を持つ“カバンの町”といえば? の質問にまっさきに「豊岡」と思い浮かぶ人はかなりのカバン通。兵庫県の日本海側に位置する豊岡市は他社製品を主に製造するOEMを中心に、工場や下請け、材料問屋が立ち並びカバンの生産数日本一の場所。そして、MADE IN JAPANを支える中心地なんです。

長い間黒衣に徹してた同エリアですが、近年は地域ブランド“豊岡鞄”の名を掲げ、カバンの生まれるトコロとしてゆっくりながら確実に知名度も上昇、脚光を浴びつつあります。ということで、新しい鞄を手に入れたくなる新年のタイミングに、地域ブランド・豊岡鞄とともに白いバッグで話題のブランド「CREEZAN」の「JETTER」シリーズの魅力を探りに現地へ赴きました。

豊岡は「古事記」記載の柳細工をルーツに、自生するコリヤナギを使ったカゴ細工を主とした杞柳(きりゅう)産業が江戸時代に発展。明治時代の柳行李に革バンドを用いた旅行用カバンを経て、大正には旅行者の増加と「大正バスケット」の人気の後押しで、鞄産業へとシフトした歴史を持ちます。

昭和初期にはヴァルカナイズ・ファイバーを使った「ファイバー鞄」、戦後は塩化ビニールレザーなど新素材を積極的に導入。ミシンによる縫製技術の向上に、軽量かつ頑丈でデザイン性の高い「オープンケース」の大ヒットで一大産地としての地位を確立、現在にいたります。

2006年には、地域団体商標として「豊岡鞄」を登録。以前から業界内で使われていた総称を地域ブランド化し、黒衣に徹するのではなくMADE IN JAPANを支える生産地・豊岡と各企業のファクトリーブランドの知名度アップを図るためポップアップストアなどを全国で展開。東京駅前の商業施設 KITTE丸の内と伊丹空港に直営店と聞けば、「知ってる!」なんて人もいるのでは?

とはいえ、「豊岡鞄」とひとことで言ってもパッと代表的なモノが思い浮かばないもの。その点について兵庫県鞄工業組合の副理事長を務めるコニー株式会社 西田正樹社長は「認定企業がそれぞれ個性を出しているからこそ。それがひとつの特色」と話します。

認定基準については「きちんと作られているかどうか」。豊岡鞄は現役の職人が製品審査を担当し、技術や機能、仕上げをはじめ7つの品質基準をチェック。なんと合格率は5割とかなりの厳しさだとか。「豊岡鞄のタグは、品質保証の証。安心マークのような存在と考えていただけたら」と言います。

■目立ち度抜群のディープホワイト、着こなしのポイントにも使える逸品

今回話を伺った西田社長が手がける「CREEZAN(クリーザン)」も「豊岡鞄」認定企業のバックブランドのひとつ。2015年に誕生し、地元の来日山(くりいざん)をネーミングにするなど地域愛の深いブランドです。

特に旅がテーマの「JETTER」シリーズは、飛行機で世界を飛び回るジェットセッターをイメージ。空の雲のような真っ白なビジュアルが所有欲をくすぐると話題に。ブラックやブラウンが多いなか、イタリア産のホワイトレザーを全面に使ったコレクションは、まさに抜群の存在感です。

▲コニー株式会社 代表取締役社長 西田正樹氏

OEMで培った長年の経験を活かして誕生した同シリーズについて西田さんは「“白い鞄=僕らの鞄”、JETTERでオンリーワンを目指す」と話します。さらに「自社で企画から生産・販売まで一貫で管理できることは大きな強み。さらに業界で敬遠される白をしっかり作れるノウハウは自社の力にもなります。また、汚れを気にするからこそ工場内の整理整頓とキレイにつながる。本当にいいこと尽くし」とも。

▲常務取締役 玉那覇孝二氏

サンプル作りから生産まで担当する常務取締役 玉那覇孝二氏は作り手からの目線として「白は本当に大変。手袋に白衣姿で神経を研ぎ澄ませ、通常の何倍も気を使います。ひとつひとつ丁寧に作るため、思い入れもかなり強い」と製作現場のこだわりも教えてくれました。また、「ファクトリー自体も手間をかけることが通常運転化。ステッチの幅から強度まで厳しいクオリティ管理の成果もあって、不良もほぼゼロに近い」と言い切るほどの自信をのぞかせます。

見学した工房の、整然と美しく並べられたパーツや手袋を着用し縫製を行う様子はまさにラボ。そして驚いたのが平均34〜35歳という社員の若さ。地場産業として将来の担い手を育てることも、地域の課題のひとつ。同社が積極的に若い世代を採用し、豊岡の未来も見据えていることが印象的でした。

そして気になるのが白ゆえの経年変化について。その部分に関して西田さんは、「使っているうちにいい感じに“こなれて”きます。そこが革製品のイイところ」と話します。城崎の旗艦店では2年使った「ブリーフケース」と新品を並べて展示。実際の風合いを見て、手にするかの判断をしてもらっているんだそう。

▲手前が2年使ったもので奥は新品

同社ではリペアはもちろん、有料のホワイトニングサービスも導入中。玉那覇さんによると、作業の際「いい味でてるね」の会話からお色直しが始まるとか。「カバンの奥に使っている方のドラマが見えるし、リペア後は“またいってこいよ!”って同士を送り出す気持ち」と現場の裏話も。長く愛用できるのはユーザーとしても嬉しい限り。なお、お直し時には使い込まれたからこその発見も、それを元に改良し製品の進化に繋げていると話してくれました。

カバンの街・豊岡の良さについて、玉那覇さんは「下請けや問屋が非常に近く10分後でも集まって打ち合わせができる。作りたいモノがすぐに実現へと動き出す」と言います。また西田さんも「じっくり作る人が育つ場所。技術を磨き上げるには最適な環境が整っている」とアピールしてくれました。

そんなモノ作りの聖地・豊岡で生まれる「豊岡鞄」たち。日本が誇る地場作業の底力を感じる逸品の数々との出会いを、ユーザーとして楽しんでみてはいかがでしょう。

>> CREEZAN

<写真・文/相川真由美

相川真由美|エディター、ライター。ライフスタイル系雑誌の編集アシスタントを経て、IT系週刊誌・月刊誌で約10年以上編集者として刊行にたずさわる。現在は、フリーの編集記者として国内外のテーマパークやエンタメ、ならびに観光、航空関連の取材・インタビューを中心に執筆中。

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