1つの時代が終わる。J1昇格を決めた横浜FCの元日本代表MF中村俊輔(44)が、今季限りで現役引退することが17日までに、分かった。18日に、正式発表される。横浜マリノス(現横浜F・マリノス)、レッジーナ(イタリア)、セルティック(スコットランド)、エスパニョール(スペイン)など、一時代を築いた希代のレフティー。今後は、指導者として新たな時代を築く。

   ◇   ◇   ◇

ファンタジスタ、希代のレフティー、天才、魔法使い…。あまたの愛称を持つ日本の10番。俊輔がプロ26年目で、現役生活に終止符を打つことを決断した。18日に、クラブから正式に発表される。

限界だった。今年6月。右足首の手術を行った。芸術的な左を支えてきた軸足は、ボロボロだった。エックス線写真に写し出された右足の関節部分の異常さは、誰の目にも明らかだったという。さらには手術後には、患部の感染症が発生。9月に復帰したが、右足は悲鳴を上げていた。

昨季途中から「引退」を考えていた。21年シーズンの途中にも、周囲に「やりきった」と漏らすこともあった。家族の支えもあり、思いとどまったが、常に「引退」の2文字は脳裏にあった。背番号変更も、1つの表れだったのかもしれない。昨季まで10を着けていたが、今季から25に変更。「俺はもういい。若い人が背負った方がいい」とMF安永(現水戸)に譲った。 1つの時代が終わる。横浜M時代には、22歳で史上最年少MVPを獲得。セルティック時代には、06-07シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(CL)で、名門マンチェスター・ユナイテッド相手に、鮮やかなFKを2本も決めた。名手の元オランダ代表ファン・デル・サールからネットを揺らした。日本代表では10番を背負うなど、その左足で光を照らしてきた。

新たな舞台で、スポットライトを浴びる。第2の人生は、指導者としてスタートする。現役を続けながら、既にB級コーチライセンスを取得済み。以前から指導者として、活動する目標もたびたび話している。J屈指の戦術眼を持つその頭脳で、未来のJリーガー、日本代表を育てていく。「俊輔監督」と呼ばれる日も、そう遠くはないはずだ。

現役選手として残された試合はあと1つ。23日のリーグ最終節のアウェー熊本戦で、スタメンの可能性がある。クラブは既に、J1復帰を果たしたが、優勝の夢は消滅。勝利を目指すことに変わりはないが、最終戦で出場機会の少なかった選手を先発として起用する可能性もある。

何より、俊輔自体の調子も良好。16日のホーム最終戦・金沢戦では、後半28分から途中出場。同42分には約25メートルのFKで枠を捉え、スタンドを沸かせた。同ロスタイムには、ゴール前の決定機でダイビングヘッド。いずれもGKに防がれたが、関係者は「まだ出来る」と惜しんだ。最後に、華麗な左足で、ピッチに別れを告げる。