ASUSと言えば、ノートPC「ZenBook」シリーズやゲーミングブランド「ROG(Republic of Gamers)」シリーズなど、高品質かつ高性能な個人(コンシューマ)向け製品を扱うブランドというイメージが強い。しかし実際には、法人(ビジネス)向け製品も手広く扱っており、日本支社であるASUS JAPANも2020年5月より法人市場へ本格参入している。ここでは、後発ながらサポートやラインナップの充実を図ることを可能にしたASUS JAPANの法人向け製品やサービスの内容について紹介していこう。
しっかりとした体制を構築し、日本での法人ビジネスに参入
冒頭でも述べたように、ASUSと言えば個人向け市場に強く、新しい価値を実現した意欲的な製品を投入することに関して定評のあるブランド、というイメージがある。実際に、新しいCPUやGPUを採用する製品をいち早く市場に投入するのはもちろん、2画面PCの「ZenBook Duo」や、当時“ネットブック”と呼ばれた低価格の小型PC「Eee PC」など、革新的な製品を先駆けて投入してきたことで、非常に高い評価を得ている。
そういった中、近年は個人向けとして投入した製品を法人でも使いたいという意見が非常に多くなっていたそうで、日本の法人市場からのASUSへの期待や需要は大きいものがあると判断し、2020年5月よりASUS JAPANは本格的に日本の法人市場へ参入することとなった。
もちろんASUS JAPANは法人市場への参入からまだ日が浅く、どちらかというと新参者だ。とは言え、すでに充実した体制が構築されているという瞬発力の高さを見せている。
ASUS JAPANで法人ビジネスを担当する執行役員営業本部部長の溝上武朗氏によると、ASUS JAPANが法人ビジネスを始めるにあたって、「法人ビジネスに取り組むためのしっかりとした組織体制作り」、「保守や保証など充実したアフターサービス」、「魅力的な製品の投入」という3つの柱を掲げて準備を行なってきたという。
組織作りという部分では、法人ビジネス部門を設立し、販売代理店との関係構築などを行なう営業部門、アフターサービスの内容を組み立てるアフターサービス部門、法人専用の問い合わせ窓口などを用意。これにより、問い合わせから販売、アフターサービスまで対応できる体制を構築している。
また、販売体制についても、オンラインでの販売に加えて、販売代理店や再販業者などの販売パートナーと連携した体制が整えられている。
上では、販売代理店や再販業者など現在の日本での法人向けPCは、確かにオンラインでの販売が伸びている。ただ、それはまだ2割程度でしかなく、「ASUS JAPANが法人ビジネスを展開するのパートナーと連携し、パートナーを通じて顧客へ提案、販売する体制を整えることが非常に重要と考えている」(溝上氏)という。
そこで、これまで個人向け製品を扱っていた販売代理店が法人向け製品を取り扱う体制を整えるとともに、再販業者に向けても商品の特徴を紹介したり、法人向け製品を販売するうえで必要となる情報を提供するプログラムを用意するなどして、窓口を拡げていく計画だ。
オンサイトサポートや延長保証など顧客ニーズに柔軟に対応
アフターサービスも法人向け製品では非常に重要な要素だ。ASUS JAPANの法人向け製品では、法人専用の問い合わせ窓口を用意してトラブルへの対応を行なうとともに、チャットによるサポートも用意。
また、製品にはオリジナルアプリ「MyASUS」が用意され、トラブルシューティング情報などを検索したり、PCの診断が行なえるようになっているため、自分でも比較的簡単にトラブルに対応できるよう考慮されている。
加えて、延長保証やオンサイトサポート(出張修理)などのサービスも用意されている。
例えばASUS JAPANでは、故障原因不問で部品代金の20%の負担のみで修理が受けられる1年間の保証サービス「ASUSのあんしん保証」(サービスは1回のみ)を用意し、個人向け製品に無償で提供している。
それに対し、法人向け製品では、個人向けと同じ内容のASUSのあんしん保証サービスを1年間無償で提供するのに加え、保証期間を4年または5年に延長する有償の「ASUSのあんしん保証プレミアム[法人向け]」が用意されている。
ASUSのあんしん保証プレミアムでは、4年または5年の延長保証となり、1年ごとに1回ずつ、故障原因不問で無償修理が受けられるとともに、バッテリ交換にも対応。情報を保護するという観点から、修理時には内蔵ストレージについてもより厳重な扱いが行なわれるため、その点での安心感もある。
また、オンサイトサポートサービスは、2021年下半期より順次開始される。オンサイトサポートを展開するパートナーと組むことで、全国約80%の地域をカバーする185カ所の拠点を確保するとともに、30都市では最短1営業日での対応を実現。
土日休日や夜間などの営業時間外のサポートは、通常のエンドユーザー向けサポートやチャットでのサポートなどを活用することで対応するという。このほか、無料の引き取り・配送サービスによる保証も提供しており、万が一の故障やトラブルにも柔軟な対応が期待できる。
そして、これらアフターサービスの内容について、顧客のニーズに合わせて細かく設定できる点が強みだという。ASUS JAPANで法人向けアフターサービスを担当するセールスサポート マネージャーの朱 彥錡(しゅ げんき)氏によると、「製品購入前にASUS JAPANのアフターサービス担当と営業担当者、顧客との間で綿密なディスカッションを行ないつつ、顧客のニーズに合わせたアフターサービス内容を提案していく」という。
例えば、オンサイトサポートは不要だけど延長保証は必要、また定期的に新しい製品にリプレースしたい、そういった要望にも柔軟に対応できるとのことで、「顧客ごとに満足できるアフターサービスを細かく設定して提供できるのが強みになる」(朱氏)と胸を張った。
様々な用途に対応できる充実のラインナップを用意
このように、充実した販売体制やサポート体制が整えられているASUS JAPANの法人向けサービスだが、販売している法人向け製品としては、一般ビジネス向けの製品からクリエイター向けの製品、教育市場向けの製品まで充実したラインナップが用意されている。そして、その中で一般ビジネス向けとなるのが「ASUS Expert」シリーズで、2021年8月末にラインナップが拡充され、選択肢が大きく拡がった。
ASUS JAPANが初めて法人向けとして投入した製品は、2020年5月に登場した、14型ディスプレイを搭載しつつ870gの軽さを実現したビジネスモバイルノートPCの「ExpertBook B9」シリーズだった。
そして2021年8月末に、最新のExpertシリーズとして、軽量モバイルノートPCの「ExpertBook B9」新モデル、コンバーチブル型2in1/クラムシェルPCの「ExpertBook B5」シリーズ、コストパフォーマンスに優れるノートPC「ExpertBook B1」シリーズ、そして小型デスクトップPC「ExpertCenter D5」の4シリーズが新たに登場した。これにより、デスクワークからモバイルワークまで、幅広い用途に対応できる製品ラインナップが確保された。
ExpertBook B5シリーズ
Expertシリーズの中で中心的な位置付けとなる製品が、「ExpertBook B5」シリーズだ。ディスプレイが360度開閉するコンバーチブル型2in1の「ExpertBook B5 B5302FEA」とクラムシェルの「ExpertBook B5 B5302CEA」を用意しており、前者はタッチ操作やペン入力も可能で、様々な業務に柔軟に対応できる点が特徴だ。
コンバーチブル型の方は2in1仕様ながら、高さは16.9mmと薄く、重量も約1.2kgと軽量で、米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」準拠の優れた堅牢性も備えているため、モバイル用途にも安心して活用できる。
セキュリティ機能も充実しており、TPM 2.0準拠のセキュリティチップの搭載はもちろん、Windows Hello対応の顔認証カメラや指紋認証センサーを搭載し、カメラにはプライバシーシャッターを用意。また独自のセキュリティアプリ「ASUS Business Manager」も搭載しており、USBデバイスの利用を制限したり、システムレジストリの変更、日時の設定などの制限、ストレージデバイスの暗号化といった高度なセキュリティ設定も可能。
もちろん性能面も抜かりはない。CPUには第11世代Coreプロセッサシリーズを採用し、メモリも最大16GB搭載できるため、高負荷な作業にも問題なく対応可能。内蔵ストレージは高速PCIe/NVMe SSDを採用し、OSやアプリが快適に動作。Thunderbolt 4×2やHDMI出力、有線LANなどポート類も充実しているため、周辺機器の利用など拡張性も優れる。
それでいて価格面も比較的安価に抑えられており、幅広いビジネスシーンに柔軟に対応できるPCとして優れた魅力を備える製品となっている。
ExpertBook B9シリーズ
Expertシリーズ最上位モデルとなるのが、「ExpertBook B9」シリーズ。14型ディスプレイを搭載しつつ、薄型軽量で米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」準拠の優れた堅牢性、駆動時間も長いという特徴を備え、最新モデルでは第11世代Coreプロセッサシリーズの採用で性能を大きく向上。最大16GBと余裕のメモリ搭載や、SSDを最大2台同時搭載して最大4TBの大容量ストレージの確保、Thunderbolt 4×2や有線LANも標準で利用可能でき拡張性にも優れている。
携帯性に優れるモバイルノートPCながらメインマシンとしても活躍できる妥協のないパフォーマンスを発揮する点が大きな特徴だ。
ExpertBook B1シリーズ
ExpertBook B1シリーズは、15.6型の「B1500CEAE-BQ1795R」または14型の「B1400CEAE-EB2630R」などといったいわゆるメインストリームノートPCとして位置付けられる製品。
とは言え、第11世代Coreプロセッサシリーズの搭載や最大16GBのメモリ搭載が可能で、高負荷な作業にも問題なく対応可能。合わせて、優れた耐久性や豊富な拡張ポートの用意も、ビジネスPCとして重要な要素となる。それでいて比較的安価となっているため、コストパフォーマンスに優れるビジネスPCと言える。
ExpertCenter D5シリーズ
ExpertCenter D5 SFF D500SC(D500SC-G5905BLK)は、縦置き横置きどちらにも対応するスリムボディを採用するミニデスクトップPCだ。コンパクトボディのため置き場所を取らず、省スペースに利用できる。搭載されるマザーボードはもちろんASUS製で、100%固体電解コンデンサを採用しており、企業向けとして求められる優れた耐久性を誇る。また拡張スロットも豊富で、様々な用途に対応できる柔軟な拡張性も備えている。こちらも第11世代Core i5まで搭載できるため、性能面も不安がない。
これらExpertシリーズは、法人向けらしく優れたセキュリティ性が確保されている。TPM 2.0準拠のセキュリティチップは全モデルが搭載しており、ExpertBookシリーズではWindows Hello対応の生体認証機能も用意。またExpertBook B5でも紹介したセキュリティアプリ「ASUS Business Manager」も全シリーズに搭載しており、管理部門が求める機能制限にも対応可能。もちろん、Windows 11も問題なく利用できる。
このほか、テレワークへの対応も充実。例えばマイクで拾った音声からバックグラウンドノイズを消去する「AIノイズキャンセリングマイク」は全モデル搭載しており、バックグラウンドノイズを気にせずリモート会議が行なえる。
これらExpertシリーズの購入は、先ほども紹介したようにASUS JAPANが用意する法人専用の問い合わせ窓口を利用したり、パートナーの販売代理店を利用するのが中心となる。ただ、直販サイトの「ASUS Store」での購入であれば、1台単位での購入にも対応可能。合わせてASUS Directで購入する場合には、在庫がある製品は即日出荷で最短翌日に届く。またカスタマイズ対応モデルについては、受注生産となるため日数はかかるが、スペックのカスタマイズにも柔軟に対応できるという。
このほか、ASUSが扱うサーバーや液晶ディスプレイ、無線LANルーター、スマートフォンなどと合わせて提案できる点も強みとなるそうだ。
そして、ASUS Storeでは法人だけでなく個人での購入も可能となっている。もしExpertシリーズを個人で利用したいという場合には、ASUS Storeからの購入がおすすめだ。
2桁のシェアを獲得を目標に長い目で活動を続ける
ASUS JAPANの法人向けビジネスは、溝上氏が「ほぼ最後発と思っている」と指摘したように、まだ開始して日が浅い。それでも、ASUSの強みである製品開発力、行動力、柔軟性で日本向けへの製品導入を行なうとともに、1台からでも購入できる法人向けモデル、他社にはない法人向けあんしん保証サービス、多岐に渡る製品カテゴリ、ASUSが扱う豊富な製品群と組み合わせた製品提案などを強みとして、長期的な視野で取り組む計画だ。
溝上氏はそのうえで、「まずは認知いただくのがファーストステップ」であるとし、多くの法人ユーザーに、ASUSにも法人向け製品があるということを知ってもらいつつ、法人ビジネスに関してしっかりとしたポジションが取れるところまで持っていきたいという。そして、「3~5年で法人向け市場において2桁シェアの獲得を目標として、腰を据えて取り組みたい」と力強く宣言した。
もともとASUSは、製品力に関しては申し分ないものを持っており、法人向けの製品についてもその力を活かした魅力的な製品がすでに揃っている。そして、その圧倒的な製品力を武器に、日本の法人市場でも注目の存在となっていく可能性は十分に高いと言える。それだけに、今後の法人向け市場におけるASUS JAPANの取り組みには、継続して注目すべきだろう。
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