新型コロナウイルスの感染が終息するまでの間、特例措置として厚生労働省が解禁した。医療従事者と受診者を感染から守り、負担も減らせる診療の一形態として、課題を乗り越えながら前へと進めたい。
オンライン診療はこれまで初診は受けられなかった。2018年度に診療報酬が拡充されても、生活習慣病や難病といった一部患者らが対象だった。
今回の全面解禁で、対象疾病の制限なく初診から受けられる。
感染が心配な人も「誰かにうつしたくない」と受診をためらうことがなくなる。行き帰りの負担もない。医師は自宅などで療養中の人を離れた場所から診察でき、感染リスクが減る。コロナ以外の来院者も安心だ。
電話やネットから予約する。電話による受診も可能で、薬も処方してもらえる。初診料の窓口負担は最大642円と、対面診療より低く設定された。
厚労省は県内を含む全国の実施機関をホームページで公開した。初診から可能な機関、再診から可能な機関がある。事前にかかりつけ医に相談した上で、自宅に近い医療機関を選択したい。
いいことずくめに見えて、懸念もある。
医師が直接見たり触れたりできないので、誤診や見逃しの不安が付きまとう。初診は特にそうだ。医師はそうした不利益や、オンラインに適さない疾病について患者に丁寧に説明しなくてはならない。患者になりすまして薬を得る不正にも備える必要がある。
パソコンやスマートフォンに慣れていない高齢者にどう広げるかも課題だ。利用環境をサポートするサービスがほしい。山間地では集落内にオンライン診療が可能な場所を自治体が整える、といった対応も検討してはどうか。
気掛かりなのは、規制緩和の掛け声で政府が前のめりにも見える点だ。今回、安全性の観点から全面解禁には慎重だった厚労省サイドを規制改革推進会議が強く押し切った格好だ。
解禁はコロナ対策と適正な医療を広く提供するのが狙いだ。経済効果を優先すべきではない。現場の運用から安全性を評価して、終息後に診療のあり方をもう一度議論する必要があろう。
患者と医療従事者がリスクとコストを低減できる一つの選択肢として、無理なく定着させたい。
(4月26日)
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April 26, 2020 at 07:22AM
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