「プロで生きていく上で、妥協、限定、満足は禁句ですよ。飽くなき挑戦あるのみ」
野村克也さんのこの言葉を胸に、2月の終わりからひたすらページをめくり、キーボードを叩き続けた。
過去の本誌998冊と、1993年11月に発売された臨時増刊号の目次から、野村さん本人や、関わりの深い選手へのインタビュー、野村さんが率いたチームのレポートを見つけ出す。ページを隅から隅まで読み返しては、野村さんの「名言」を抽出。これを50音順に並べて、言葉の背景や野村さんの意図を説明する文を書き加える。
その数、165。3月5日、早朝5時。最後の説明文を書き終えた瞬間、誰もいない編集部で、池山隆寛ばりのガッツポーズをしてしまった――。
こうして完成したNumber999号の「野村克也 名言大辞典」ですが、実はページ数の都合上、掲載しきれなかった名言が、まだあるんです。ここで、そのいくつかをご紹介します。
山崎への助言、長嶋&松井論。
「後のことを考えて野球をしろ」(722号)
これは楽天時代、ベテランとなった山崎武司が野村監督に言われ続けたアドバイス。当時、山崎はこう振り返っている。「普通の人は『野球だけを考えろ』って言うと思うんですけど、『人付き合いも、後のことを考えてしろ』って言います。そのことを肝に銘じて野球をしていますし、要は野球バカじゃダメなんだ、ということだと思います」。
「工夫するには理屈が必要だ。しかし、そうした工夫のいらない選手は、理論も必要ではない」(828号)
2013年、国民栄誉賞を受賞した長嶋茂雄と松井秀喜について語ったインタビューでの言葉。野村が考える打者の理想形は、「ストレートを待ちながらどんな変化球にも対応できること」。ただし、これには総合的な才能が高いレベルで必要になる。「イチロー、松井など限られた才能の持ち主だけが、この理想形を実現できる。長嶋もそうした特別な才能の持ち主だった」。その才能を持ち合わせていないと自覚した野村は、配球を読み、タイミングの取り方を工夫した。そんな自分と“天才”たちを比較した。
2020-03-17 05:59:17Z
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