大荒れの市場を目の当たりにし、イングランド銀行(英中央銀行)に行動を求める圧力が強まっている。ベイリー総裁にとっての問題は選択肢が限られていること、そしてどれもリスクを伴うことだ。
与党・保守党の議員や英中銀の元金融政策委員会(MPC)メンバー、ロンドン金融街のアナリストらは声をそろえて、市場を落ち着かせるため中銀は緊急介入すべきだと訴えた。しかしベイリー総裁は「次回会合で入念な評価を行い、行動する」との声明を発表するにとどめ、緊急措置の発動には至っていない。
エバコアISIのクリシュナ・グハ氏は26日のリポートで、「英中銀にとって良好な選択肢はない」と指摘。「定例会合を待たずに行動することは不十分で裏目に出る恐れがあり、それよりはまず政府が動くかどうか、市場が短期的な底を見いだすかどうか見極める方を英中銀はずっと好むだろう」と述べた。
この混乱への対処で英中銀が取り得る選択肢は以下の通りだ。
安心を与える
最も率直で短期的な選択肢は英中銀またはベイリー総裁が声明で安心感を与えることだろう。欧州連合(EU)離脱方針が決まった2016年の国民投票の翌朝、カーニー前総裁がこうした手段をとった。元英中銀MPCメンバーのアダム・ポーゼン氏は、ポンドが下落するなら金利を引き上げるとベイリー総裁は「週半ばまでに公言」するべきだと述べた。イングランド銀行(英中央銀行)は26日、2%のインフレ目標を達成するために「必要なだけの」金利変更をちゅうちょしない方針を明らかにした。
27日に発言機会がある英中銀チーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏が何らかの役割を担う可能性もある。問題は、市場の急変動が続いているのに口先だけで効果があるのかということだ。
緊急利上げ
緊急利上げが選択肢となる可能性はある。こうした行動を求める声は先週末から聞かれ始め、それ以来強まり続けている。英中銀は政府が経済対策を発表した前日に政策金利を2.25%に引き上げたばかりだが、出遅れたとの批判を浴びている。
短期金融市場は11月の次回政策判断を含む時点までに、200ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げがあると見込んでいる。今週に大幅な利上げがある可能性も織り込まれつつある。
緊急行動は市場のパニックをかえって強めるリスクを伴い、相場の下げを止められなければそのリスクは大きくなる。「緊急利上げに今踏み切ることの問題は、市場が既に100bpの現実的な確率を織り込んでいる中で効果を持たせるには、200bpの利上げが必要になるだろうということだ」とフューチャーズ・ファーストのアナリスト、リシ・ミシュラ氏は語った。
量的引き締めの休止
英中銀が量的緩和で購入した英国債を売却する計画を遅らせることも、可能な対応だろう。売却は来週の開始を予定している。
だがこの休止はインフレ抑制の取り組みに完全に矛盾すると捉えられかねない。これまでのガイダンスにも反する。
市場への直接介入
もう一つの選択肢は、ポンドを押し上げる目的で市場に直接介入することだろう。だが必要となりそうな額に比べれば、英国の外貨準備はわずかしかない。国際通貨基金(IMF)のデータによると、英国の外貨準備は8月末時点で1080億ドル(約15兆6200億円)相当。先週に為替介入を行った日本は、1兆1700億ドルの外貨準備があった。
ニューヨークを拠点とする調査会社エグザンテ・データのイェンス・ノルドビグ氏は24日、「為替介入の効果は数分しか持たない」とツイートした。
11月まで待つ
最後の選択肢は、市場の成り行きに任せて政策対応は11月までとらないことだ。クワーテング財務相とトラス首相は自分たちの計画に対する投資家の不安を、自分たちで鎮める取り組みを始めるための時間を稼げるようになる。
トラス首相の外部アドバイザーを務めるジェラード・リヨンス氏は26日、英中銀が金利で行動することが必要だが、クワーテング氏も自らの経済ビジョンについて市場を安心させるために、さらなる努力が必要だと主張。「クワーテング氏の財政支出拡大が必要であり、インフレを加速させず、英国の財政でまかなえるのか、市場はまだ確信できていない」と指摘した。
原題:
Defending The Pound: Here Are the BOE’s Risky Options(抜粋)
からの記事と詳細 ( ポンドを防衛せよ、英中銀が取り得る5つの選択肢-全てにリスク - ブルームバーグ )
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