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Thursday, August 25, 2022

オール東北の陣容、少年野球が下支え<仙台育英・100年の扉開く(3)> - 河北新報オンライン

オール東北の陣容、少年野球が下支え<仙台育英・100年の扉開く(3)> - 河北新報オンライン

 第104回全国高校野球選手権大会で宮城代表の仙台育英が頂点に立ち、東北勢の悲願だった甲子園大会初優勝を果たした。偉業を成し遂げた仙台育英の戦いを振り返り、近年の東北勢のレベルアップの背景や、大旗の「白河の関越え」の意義に迫る。(5回続き)

決勝に向けランニングをして調整する仙台育英の選手たち=21日、甲子園球場

18人中16人

 下関国際(山口)との決勝で先発した仙台育英の左腕斎藤蓉(3年)。7回1失点の好投を、甲子園の右中間スタンドから万感の思いで見つめる男性がいた。

 斎藤俊さん(57)=酒田市=は、斎藤蓉が中学時代に所属した硬式野球チーム「酒田リトルシニア」会長で総監督も務める。「球筋もはっきり見えた。いいピッチングだった」

 仙台育英のベンチ入りメンバー18人のうち16人は東北の中学出身だ。宮城9人、山形3人、岩手2人、青森、福島1人。各地の軟式、硬式チーム育ちの選手が集まった「オール東北」の陣容だった。

 一塁手の住石孝雄(2年)も酒田リトルシニアの卒業生。チームは優勝メンバーを2人も出した。「庄内の中学生が高校野球で活躍し、いつか甲子園で優勝できるようにと硬式チームを設立したが、目の前で起きるとは」。その瞬間、斎藤さんは涙がこみ上げた。

理論を重視

 日本リトルシニア中学硬式野球協会東北連盟には6県の62チームが加盟する。青森山田リトルシニアが今夏の全国大会で2連覇するなど高いレベルを誇る。「この10~20年で指導者の世代交代が進み、けが防止や体づくりなどで新しい理論やデータを重視するチームが増えた」。事務局長の佐藤英運(ひでゆき)さん(57)=名取市=は語る。

 岩手出身の米大リーグ、エンゼルス大谷翔平(28)=花巻東高出=の二刀流の活躍や2020年春に導入された高校野球の球数制限もあり、投手を含め複数ポジションをこなす練習を重視する傾向が強まった。指導者はさまざまなルートで強豪高校の練習方法やデータ活用法、どんな選手が求められているかの情報を集めて指導に生かしている。

 11年の東日本大震災後はグラウンドを使えないなど練習環境が激変し、東北の少年野球が活気を失った時期があった。選手集めにも苦労した。その先の仙台育英の優勝だけに、喜びはひとしお。佐藤さんは「中学、高校の一致した考えの選手づくりが成功した証し」と意義を強調する。

超高校級も

 少年野球の努力にも支えられ、近年の甲子園は東北勢の躍進が目覚ましい。20世紀に春夏合わせて4度だった東北勢の決勝進出は01年以降、今夏を含めて9度。09年選抜大会準優勝の花巻東のエース菊池雄星(31)=大リーグ、ブルージェイズ=や大谷ら、超高校級の選手も出現した。

 1989年夏の甲子園で準優勝した仙台育英のエース大越基さん(51)=山口・早鞆(はやとも)監督=が指摘する。

 「私たちの前に磐城(71年夏)と三沢(69年夏)が決勝に行ったが、自分の目で見たことがない。だけど今は数年に1度のペース。決勝を戦う東北のチームの姿を見て、今の子は『俺もこの学校に入り、甲子園の決勝で勝つ』という気持ちになれる」

 仙台育英が初優勝を決めた時、須江航監督(39)はベンチ前で空を見上げ「6県の強豪校の監督や選手の顔が浮かんだ。皆さんのおかげだな、との気持ちがあふれた」という。東北の強豪校が「白河の関越え」を競い合ってきた環境も快挙を後押ししたといえる。

 100年の扉が開かれ、各校は新たな気持ちで来春の選抜大会を目指す。11年夏から3季連続準優勝した青森・八戸学院光星の仲井宗基監督(52)は「仙台育英に続かないと、本当に東北の高校野球のレベルが上がったとは言えない」と気を引き締める。
(野仲敏勝)

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2022-08-25 21:00:00Z
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