ローカル線の区間別収支を7月28日に公表したJR東日本の深沢祐二社長が30日、河北新報社のインタビューに応じた。人口減少に伴う利用者の落ち込みは避けられないとして、鉄道の活性化策や鉄路以外の転換など持続可能な地域交通の在り方についての協議を沿線自治体に求める意向を示した。
JR東は、1日1キロ当たりの利用者を示す平均通過人員(輸送密度)が2000人未満の35路線66区間の2019年度の収支を開示した。全てが赤字で、赤字額は計693億円だった。
深沢社長は輸送密度で一律に判断せず、区間別の状況を踏まえる方針を強調した。一方で、鉄道は大量輸送が前提だとして「利用者が少なければ、もっと適切な交通モードがある」と指摘。将来の需要予測を考慮する必要性にも触れた。
バスやバス高速輸送システム(BRT)、自治体がレールや駅舎を保有・管理し、鉄道会社がサービスを担う上下分離方式、第三セクター移管などのモデルが管内にあると説明した。
国土交通省の有識者検討会が7月にまとめた提言には、事業者と自治体が路線の存廃を議論する国主導の協議会設置が盛り込まれた。深沢社長は枠組みの新設を待たず、議論を進めるとした。
交通網の将来を議論 深沢社長一問一答
東北のローカル線の収支公表に関する取材に応じたJR東日本の深沢祐二社長は「まちづくりの観点からどの交通体系がいいのか自治体と一緒に知恵を絞りたい」と述べた。一問一答は次の通り。
[深沢祐二(ふかさわ・ゆうじ)]東大卒。1978年旧国鉄入社。JR東日本取締役人事部長、常務、副社長を経て2018年から社長。67歳。北海道函館市出身。
―収支公表の狙いは。
「ローカル線は、非常に大きな経営課題と認識していた。新型コロナウイルスの流行で利用者が減少した部分もあるが、人口減少の影響が大きい。地域での役割は区間ごとに違う。一律に数字で切って判断するよりも、地域と議論するきっかけにしたい」
―開示した35路線66区間の全てが赤字だった。
「黒字の地方路線はない。大都市圏の黒字で地方路線をカバーしていたものの、赤字の絶対額も大きくなった。利用者は減り続ける。持続可能な地域交通に関して地元の皆さんと話をしていかなければならない」
―協議に前向きな自治体もある。
「個別に話をしていきたい。JR東のエリアではバスやバス高速輸送システム(BRT)、上下分離、第三セクターへの移管などのパターンがある。利用客の評価なども参考になると思う」
―廃線を懸念する声もある。地域交通の将来像は。
「地域が活性化し、人口が増えるのが理想的な形だ。鉄道は一定の需要がないと成り立たないし、ふさわしい交通モードではない。人口が減るならば、鉄道以外に転換した方が地域交通としては機能する。鉄道はどうしても郷愁のようなものにフォーカスされる。将来を見た場合、次のステップを一緒に考えていくべきだ」
―国の有識者検討会は存廃協議入りの目安を輸送密度1000人未満と示す。
「われわれは国ではない。一律に基準を決めて進む話ではない」
―自治体に交通モードの転換を働きかける考えは。
「北海道夕張市では鉄道を残すよりも、バスを便利にした事例がある。その地域の暮らしを考えた時にどの交通モードがいいか、われわれもお手伝いできるところは協力したい。三陸のBRTも便利だとの評価がある」
―今月の記録的大雨で運休した路線がある。今後の協議への影響は。
「現実問題として災害が年々激甚化している。復旧には多額の費用がかかり、再び災害が起こる可能性もある。インフラをどうするかという国全体の問題と密接に関わる話だろう」
(聞き手は東京支社・吉江圭介、一力遼)
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