インフレ不安が垣間見えるようになりました。失われた30年とも言われる中で所得が増えていないのに、じわじわと物価も上がりつつあります。だとすると高度成長期のようにインフレにともない会社が一律で給与を増やしてくれるベースアップが復活するのでしょうか。それとも、成果を出した人だけがインフレについていけるのでしょうか。
■所得の増やし方は置かれた状況で違う
所得の増やし方について、3種類の意見を聞くようになりました。 「まじめに頑張っていれば所得は増える」という意見は、年配の方や大企業に勤めている方に多い意見です。年功昇給の時代を長く経験していたり、安定的な昇給を保障してくれている会社に勤務している人たちにとっては、それが事実だからです。 「なにをしたって所得は増えない」という意見は、非正規雇用の方や、給与の天井がある業界(参照記事「あなたは会社に何を売る 人事評価でコロナに逃げない」)で働いている方々から聞くことができます。それもまた、それらの方々の大半にすれば、事実です。 しかしこんな意見を言う方々もいます。 「所得は自力で勝ち取るものだ」 インセンティブ報酬割合が大きい営業系の会社で働いていたり、自分のスキルを磨いて転職を目指す方々はそうおっしゃいます。また副業をしたり、起業を目指したりする方々もこのタイプに属するでしょう。これもまた事実です。 言い換えてみれば、それぞれの人が置かれている環境によって、所得を増やす方法が異なるということでもあります。 ではこの3種類の意見のうち、どれに従うことが望ましいでしょう。
■今の日本人はお金がなくても生活に不満ではない
その前に、人は給与を増やしたいと思っているかどうかを考えてみましょう。 そんなの増やしたいに決まっている、と思われるかもしれませんが、様々なアンケート結果では、意外な傾向が見えてきます。 たとえば内閣府が行っている世論調査という統計があります()。 こちらでは現在の生活に対する満足度などを調査しているのですが、所得や収入への満足度を聞く項目もあります。失われた30年と言われたり、給与が増えないと言われたりもしているくらいだから、さぞ不満が多いのだろう、と想像していました。 しかし調査結果はほぼ拮抗、というかむしろ満足している人の方がわずかに多いものでした。所得や収入に満足している人の割合52.3%、不満な人の割合45.6。というものです。(2019年度調査結果。満足=満足している、まあ満足している、と回答した人の合計。不満=不満だ、やや不満だ、と回答した人の合計。回答にはどちらとも言えない、わからない、という選択肢もあり、それらを合計して100%になる) もちろん年度によって不満の方が多い年もあります。ただ、それでも満足と不満の間でそれほど大きな差はでません。 さらに現在の生活そのものへの満足度は、同じ調査で73.8%が満足だと答えています。不満と答えたのは25%の方々です(満足、不満の構成は上記と同じ)。 ということは、所得や収入に不満だけれども、生活には満足している、という人が一定割合で存在するということです。
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