日本をはじめ世界の主要な国・地域が、今世紀半ばの温暖化ガス排出量を実質ゼロにすると打ち出したわね。約束を守るためには、政府や企業、消費者は具体的にどのような対策が必要になるのかな。 6月中旬の主要7カ国首脳会議(G7サミット)でも議論した脱炭素について、野崎典子さんと小川めいこさんが滝順一編集委員に聞いた。
野崎さん「各国・地域はどんな目標を立てていますか」
日本や米国、欧州連合(EU)、英国といった多くの先進国・地域は2050年までに二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を明らかにしています。30年までの中間目標についても、温暖化抑止を目指すパリ協定に沿うかたちで大幅な削減を約束しました。 最大のCO2排出国の中国は、先進国から10年遅れの60年までに実質ゼロにするとしています。中間目標は総排出量を30年ごろ減少に転じさせ、国内総生産(GDP)当たり排出量を65%以上減らします。今後約10年は、まだ排出が増えるということです。
小川さん「主要な国の動きの背景に何があるのですか」
まず、気候変動で災害が増えさらに環境が悪化するとの予測に基づき、政府に迅速な対策を求める市民の声が高まってきたことがあります。スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんが象徴的ですが、欧米では若者たちが声をあげています。ドイツの連邦憲法裁判所が4月、政府の削減計画は不十分との判断を示し、政府は実質ゼロ目標を5年前倒ししました。 次に、脱炭素を実現する技術と産業のグローバル競争です。電気自動車(EV)や蓄電池、バイオ燃料など巨大市場が生まれようとするなか、優位に立とうと国家間や企業間の競争が激化しています。投資家や金融機関にも、気候変動へのリスクを抱えた企業を選別する動きがあります。化石燃料に固執する企業や国は苦しい立場に置かれます。
野崎さん「実質ゼロはどうやって実現するのですか」
ガソリン車の販売や石炭火力発電所の建設を禁止するなど、規制強化がひとつのやり方です。税や補助金などで脱炭素を加速する誘導的な手法もあります。エコカーへの減税や太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーなどへの補助金は実施済みですが、さらに手厚くしたり効果を高めたりできるよう工夫することも考えられます。 CO2排出に値段をつけるカーボンプライシングも検討されています。欧州では事業所ごとに排出の上限を定める「排出量取引制度」があります。上限を超えて排出する事業所は、排出枠を取引市場から購入しなければなりません。排出削減に成功して余った枠は売ることもできます。排出量取引は米国や中国でも導入が進み、将来は世界規模の取引市場が見込まれます。 石炭など化石燃料に課税する「炭素税」もカーボンプライシングの一手法です。日本では「温暖化対策税」がありますが、化石燃料の使用に抑制をかけるほど高額ではありません。高くすれば化石燃料消費にブレーキがかかる一方、生活や産業にコスト増のかたちではね返ります。
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