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Wednesday, March 31, 2021

最新の安全性能のためにサブスクという選択肢。ボルボのSMAVOから学ぶ「人」を中心としたサービスのあり方 - XD(クロスディー)

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車に乗り込むとき、もはや無意識に締める三点式シートベルト。これを1959年に開発し特許を無償で公開したのは、スウェーデン生まれの自動車メーカーボルボだ。
その後も後ろ向きチャイルドシートやサイドエアバックなどを開発し、車の安全性能向上のためにさまざまなイノベーションを起こしている。

YouTube「The new Volvo XC60 Roll Over crash test」より

ボルボが安全性には一切の妥協を許さず情熱を注ぎ、投資を行うのは「すべては人を中心に考える」という企業理念に基づいているから。車という単なる製品を売るのではなく、「人を中心にしたカーライフ」を実現したいという思いからだ。ボルボ・カー・ジャパンが2017年にスタートした車のサブスクリプションサービス「SMAVO(スマボ)」も、車の購入体験を“人”中心に再設計することで生まれたサービスだという。

今回はデジタル&カスタマー・エクスペリエンス部 ディレクター代理の益田香氏と営業本部 SELEKT&保険・ファイナンス担当マネージャー越田正浩氏のおふたりから、SMAVOスタートの背景と、ボルボに根づく「すべては人を中心に考える」思想とはどのようなものかについて話を聞いた。

ライフスタイルの変化に合わせて、簡単に車を乗り換える

“スマ”ートに “ボ”ルボに乗れる「SMAVO(スマボ)」には「車を購入するときの煩わしさ」を取り除き、純粋に車に乗ることを楽しんでほしいという狙いがある。2017年にスタート後、利用傾向を分析し、2019年に内容をリニューアル。顧客ニーズへの最適化をはかり、ふたつのプランを設定した。

「SMAVO 2/3」は3年契約で2年後から、「SMAVO 3/5」は5年契約で3年後の初回車検時に、乗換精算金の22万円(税込)を支払えばボルボの全車種(除くV40、V40 Cross Country)に乗り換えできる(※「SMAVO 3/5」は初回車検後であれば乗換清算金が不要となる)。たとえばエントリーモデルの「XC40」をSMAVO 3/5で契約すれば、月額料金は6万円台から。契約期間終了時に追加料金が発生することもない。実にシンプルなサブスクサービスだ。

2019年の新車販売のうちSMAVOによる契約は約9%、2020年には約10%で、着実に市場シェアを伸ばしている。

越田氏「SMAVOというネーミングは『スマホ』に由来しています。各キャリアが提案するスマートフォンの料金体系は、デバイスの分割料金も通信費も通話料もオプションも、月払いで合算され、ユーザーは『この機種は総額いくらだった』と意識することなく支払っているじゃないですか。

車の購入にあたっての料金も、スマホ同様にもっとわかりやすくできないだろうかと考えた。オールインワンで、お客さまにフィットするサービスを考えた結果として、サブスクリプション方式を選んだんです」

ボルボ・カー・ジャパン 営業本部 SELEKT&保険・ファイナンス担当マネージャー 越田正浩氏


一般的に車の販売価格は、各ディーラーの値引き額や登録諸費用などによって異なる。大きな買い物なので、よりお得なディーラーを調査したくなるが、それは「車に乗る」体験には本来必要のない作業だ。SMAVOは全国一律同一料金体系で、車体価格や自動車税、メンテナンス代、ドライブレコーダー代なども含まれている。ユーザーは余計なことを考えず、「どの車に乗るか」だけを吟味できる。

益田氏「スマートフォンは、新しい機種が次々と登場し、そのたびに技術革新されています。ボルボの新しい車にも安全に対する技術革新が盛り込まれます。最新のボルボで最高の安全を届けたい。ですから、できれば多くの方に新しい車にお乗りいただきたいんです。そうでなくても、お客さまにとっての最適な車は、ライフステージによって変わります。結婚する、子どもが生まれる、引っ越しをする……。ご自身の状況に適した車に柔軟に乗り換えるにも、車の購入は手続きが煩雑です。この顧客体験をもっとお客様に寄り添ったもの、ストレスのないものとして、向上できるのではと考えました」

越田氏「車を購入するとき、同時に将来的な売却査定額が気になってしまうのも面倒なことのひとつです。売却の条件をなるべく良くしたいと、白や黒などの無難な色や人気の車種を選びがち。本当は赤の車に乗りたいのに我慢しているお客さまもいます。欲しい車、欲しい色を気兼ねなく選べるのも、お客さまにとってのメリットです」

メーカーもディーラーも、向き合うのはお客さま

2017年のサービススタート時「サブスクリプション」という言葉は、今ほど浸透していなかった。自動車業界に限らず、これまでの商慣習のメインは買い切り。カーリースが少しずつ浸透してきたとはいえ、業界の新車販売に占めるリース車比率は2019年時点で14.5%程度(※)と、まだ一般的ではない。まずはディーラーと顧客に、サブスクリプションの概念を理解してもらうのがSMAVO普及のポイントだった。

越田氏「サービスの強みはなにか、どんなお客さまに適したサービスか、その勘所を掴んでもらったディーラーは、どんどん契約数が伸びていきました。ボルボを取り扱う正規ディーラーは全国に100店舗ほど。国内自動車メーカーと比べると数は少ないですが、その分、新しい概念の理解が浸透するのも早かったと思います」

Apple Music、Netflix、Amazon Prime……さまざまなサブスクリプション方式のサービスが知られるようになり、ディーラーも顧客も一消費者として、そのメリットを体感できるようになった。結果として「車を所有する」のではなく「ライフスタイルに合わせて最新車種に乗り換える」SMAVOの提供価値が認識されることにつながった。

益田氏「ボルボには“常に人を中心に考える”という企業理念があるのですが、とにかくお客さまを中心にものごとを考えます。家族的というか、『お客さまにとって便利か』『幸せになるには』と、お客さまに焦点を当てる。他の自動車メーカーさんでは、お客さまの情報は各ディーラーのみが保持し、メーカーには渡さないというケースも多いそうです。ディーラーがお互いにライバル関係にありますから。ボルボではよりよい顧客体験のため、お客さまの情報はボルボ・カー・ジャパンとして一元管理をしています。それらを分析することで、ディーラーがSMAVOを気に入ってくださりそうなお客さまの情報を把握し、適切にオススメすることができました」
(※一般社団法人日本自動車リース協会連合会調べ

ボルボ・カー・ジャパン デジタル&カスタマー・エクスペリエンス部 ディレクター代理 益田香氏


サブスクリプションでいくら敷居を下げたとしても、車を買うのは顧客にとって一大決心。デジタル化が進んだ今でも、いちばん重要な顧客との接点はディーラーでのリアルコミュニケーションだという。

越田氏「ボルボのお客さまは、ラグジュアリーホテルやレストランを利用されるような方々も多い。ディーラーでの体験も、それらと同じレベルに高めていく必要があります。マナーや礼儀なども含めて、お客さまにご満足いただけるような接客やコミュニケーションを提供しなくてはいけません」

益田氏「お客さまから話を伺うのも、ディーラーのセールスの大切な役割です。大きな買い物だからこそ、『まずは試乗してみたい』『このセールスから車を買いたい』というリアルな場でのニーズは変わりません。そこで得たお客さまのご意見やご要望をしっかりと拾い上げながら、オンラインとオフラインの両面で、より適切な体験を届けたいと思っています。コミュニケーションを通じて大切にしているのは、『人を中心にしたカーライフ』の提案です。SMAVOユーザーもボルボのオーナーと同じようにロイヤルカスタマーとして、長くお付き合いしていく関係づくりを重視しています」

SMAVOの契約者のうち、60%以上が既存のボルボのオーナー。つまりSMAVOは、ボルボのブランドを体験し満足しているコアファンからも支持を得ていると言えるだろう。

誰一人として欠けてはならない。ボルボが受け継ぐ北欧スピリット

では、ボルボが提案する「人を中心にしたカーライフ」とは、なんだろうか。それが端的に表れているもののひとつが、高い安全性能だ。これはボルボ発祥の国、スウェーデンの人々が持つ価値観から大きな影響を受けているという。

益田氏「スウェーデンには充実した福祉や社会保障制度が整備されていて、市民がとても大切にされています。人口1000万人ほどの小さな国で、一人ひとりが社会で果たす役割が相対的に大きい。だからこそ、誰一人の命として欠けてはならないという情熱がボルボの根底にあります。『人を中心にしたカーライフ』という思想もここに根ざしたものです」

ボルボでは、安全性の向上に多額の投資をしている。例えば、クラッシュテストはコンピューターシミュレーションではなく、すべての座席に人形を載せた実車を使う。人形には何千ものセンサーがあり、人への衝撃を細かく計測できる。しかも、人形は大人・子どもといったような大まかな分類ではなく、0歳児、3歳児、5歳児……といったように年齢や性別も分かれており、妊婦を想定したテストもできるそうだ。

クラッシュテストは、1モデルにつき60回〜70回。しかも、これまでにわかった研究データはすべて無料で公開している。


YouTube「The new Volvo XC60 Roll Over crash test」より

ボルボの安全性能は、同じモデルであればグレードが違っても変わらない。つまり、どの車にも、最大限の安全性能を標準搭載しているわけだ。しかも安全へのこだわりは、乗る人だけを対象にしているわけではない。

越田氏「昔は、車内にいる人をできる限り守れるように、車のボディを頑丈にしていたんです。しかし、それだけではぶつかった相手の車や周りの人への危険度が増してしまいます。車の外にいる人への安全性にも配慮する方向にシフトし、改良を重ねています」

ボルボの安全性能に対する飽くなき追求は、人を大切に考えるからこそ。ユーザーにとって快適でより安全なカーライフとは何かをつきつめていった結果、車を手に入れる際の「煩わしさ」にまで目を向け、サブスクリプション方式による料金体系を導入したことにもつながる。

こんな時代だからこそ、重要性が増すリアルコミュニケーション

2020年2月には、SMAVOの中古車版である「SELEKT SMAVO」の運用がスタートした。エントリーユーザー向けに中古車販売価格の1.3%を月額料金に設定するなど価格帯を下げ、より敷居を下げたプランとなっている(※別途諸費用が必要)。使用18か月以内の優良な中古車を、SELEKT SMAVOでまた新たなユーザーに提供する。ボルボを新車でも中古車でも気軽に乗れる選択肢を増やし、一人でも多くの方にボルボに乗ってもらうことで、その高い安全性能やブランド体験を実感してもらう狙いだ。そうやってエントリーユーザーやコアユーザー、あるいはオーナーやサブスクユーザーもわけへだてなく、「ボルボに乗る人」が相対的に増えれば、より多くの方が「安全なカーライフ」を送ることができるはず──。それがボルボの目指す未来でもある。

益田氏「愚直なまでに人の幸せと安全を考えるスウェーデン本社の考え方は、我々にとって誇りでもあります。『安全を平等に』という考え方は揺らぎません。ですからぜひ気軽に新しい車に乗り換えて、より安全な車で毎日を過ごしていただきたいんです。今後も、ディーラーがよりよい体験を提供できるように、またディーラーに立つ一人ひとりがより魅力的な人であり続けられるように、私たちメーカーは全力でバックアップしていこうと考えています」

越田氏「新型コロナウイルスの影響で、人と人との接触に制限がかかっているものの、車検制度がある限りは、お客さまとのリアルな接点はなくなりません。いろいろと試行錯誤しながらではありますが、常にアップデートしながら、これからも顧客体験を向上させて、お客さまにとって最善のサービスを提供していきたいと思います」

 
世界中を襲ったパンデミックにより、価値観も状況もあっという間に変わる社会が訪れた。フレキシブルに今の自分に適した車が手に入るSMAVOは、「密」を避けるパーソナルモビリティとしてのマイカーが注目される社会的背景にも背中を押され、顧客の支持を広げている。

しかし、変わらないこともある。人を中心に車を考えたとき、乗るときにはなによりも安全性が大事であるし、買うときにはわかりやすい料金体系や手続きが圧倒的に便利だ。

「人を大切にする」という決して変わらない思想の実現のために、柔軟に方法を変えるボルボのあり方に、今こそ学ぶべきことがあるのではないだろうか。

執筆/葛原信太郎  編集/大矢幸世 撮影/飯本貴子

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